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Lovers Sweet ?

[372]  和華  2006-12-08投稿
…──ホテル・ラグーンのフロントで「新堂という者ですが。」と飛希が名乗ると、フロント係の男は淡々とした口調で、「承っております。最上階、インペリアル=スイートでございますね。直ぐにご案内致します。」と言い、一人のボーイを飛希の案内役として付けた。

ボーイはにこやかに笑うと、「エレベーターはこちらでございます。お足元、お気を付けくださいませ。」と言い、飛希を最上階まで案内した。最上階にはインペリアル=スイート一室しかなく、エレベーターを降りるとすぐ前方に、品のいいデザインの扉があった。

飛希がエレベーターを降り、「ありがとう。」と言ってチップを渡すと、ボーイはまさかチップを貰えるとは思っていなかったみたいで、一瞬驚いたような表情をした。しかしその後、にっこりと笑って「ありがとうございます。」と言って素直にチップを受けとり、飛希がスイートルームに入るまで、じっと見送って(?)いてくれた。


飛希は、「インペリアル=スイートを使えるくらいのヒトなら…おそらくあの電話での話は本当ね…。…そうなったら私は…婚約…か…。」と呟きながら、ひんやりとする扉の取っ手に手を掛け、ゆっくりと手前に引いた。

美しく整えられた部屋の中は静まりかえっていて、一瞬、誰もいないように感じたが、飛希は静かに、足音をたてないよう、部屋の中へと入っていった。

…途中いくつも部屋へと続く扉はあったが、飛希は自分の行くべき場所が分かっているかのように、迷いなく進んでいった。

そして飛希が一番奥の部屋に入ると…そこに一人の男が立っていた。窓の方を向いて立っていたので、ちょうど飛希には背を向ける形になり、顔は見えなかったが、スラリとした長身を黒いブランドスーツに包み、どことなく品の漂う雰囲気を釀し出している。

男は飛希が来たのに気付くと、「ああ、よく来たね。…その辺のソファーに座りなさい。立っていたいのならそれでも構わないが。」と窓を向いたまま振り返りもせずに言った。

飛希は「…立っています。」とだけ言うと、その後に続く言葉を探して戸惑い、結局黙りこんでしまったのだった…。

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