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宇宙戦隊・35

[542]  豆宮  2006-12-13投稿
運転席にテシ、助手席にテチ、後部座席に男、コウ、アンドロイドの順に乗り込み、バトルシップは発進した。
警戒心ゆえか、お互いに何の会話も無い機内。全員が息苦しさを感じてるのは言うまでもない。

コウは沈黙が苦手だった。沈黙が続くとどうしても何か話さなくては、と思ってしまう。

「…申し遅れたな、俺はコウ」
コウは静寂を破り、男に話しかけた。テシとテチは最初動揺していたようだが、順々に口にした。
「…私はテシ」
「僕はテチ!」
三人はこれまでの経緯を男に話した。
「はぁ…大変やったなぁ」
「ところでさ、お兄さんのこと何て呼べばいいの?」
助手席からテチが男の顔を覗き込む。
「う〜ん…名前もなぁんも覚えとらんしな」
「じゃあ僕達が名前つけてあげるよ!ねっ!」
テチがテシとコウに呼び掛けた。
「うへ!ほんならかっこいい名前お願いします〜」
「任せてよ!じゃあ…テピ!」
「ぶはっ」
「コウ!何で笑うの〜!?兄ちゃんは良い名前思いついた?」
「そうだな…火星の偉人、ポヤカニハタ・ハダカニャッペ・タカヌツヒーハルヴォ三世から取って…」
「ださっ!長っ!シンプルに星一徹でいいだろ」
「何だその名前…」
「……知らねぇの?かつて宇宙を救った伝説の戦士の名前だよ」
「何!そのような人物がいたのか…まだまだ勉強不足だな」
「ははっ、バーカバーカ」
「何だとっ!」
「もう〜ケンカ禁止!でも何か良い名前だねホシイッテツ!イッテツで良いんじゃないの?」
テチが提案する。
「確かに強そうでえぇな。俺イッテツでえぇわ」
男は意外にもこの名前が気に入った様子で、イッテツ、イッテツと独り言のように繰り返した。
その様子を見てると、やはりコウにはイッテツが悪者であるようには見えなかった。
「なあ、本当に何も覚えてないのか?」
「うん…目ぇ覚めたらあそこにおって…そのアンドロイドが一緒におって…」
イッテツは視線をアンドロイドに向けた。アンドロイドは壊れているのか或いは電源が入っていないのか、微動だにしない。
「でも調べればきっと何星人かくらい分かるよね!服とか方言とか血でさ」
テチがイッテツを元気づけるように言う。
「早う知りたいわ…自分が何者か分からんちゅうのも気分悪いしな」
イッテツは外を見た。宇宙の闇は自分の脳内を覆う記憶のフィルターのように深く暗く辺りを覆い尽くしていた。

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