愛された記憶 5
私達は、少しづつ三人の生活に慣れていった。悲しい事も辛い事も、長く続くわけじゃない…父さんはママさんバレーのコーチ、兄はソフトボール、私はバレーボール、互いに練習や試合の応援に出かけたりした。ひょうきんな兄は、いつも友達に囲まれて人気者だった。私の友達も、兄を取り合いケンカをしたり、バレンタインのチョコを競って作り、ラブレターを渡す役に私を利用した。ある日、私の誕生会をやろう!と言い出した父さんは、朝から台所で腕を奮って、色とりどりのキレイな料理は、盛り付けまでが完璧で、もちろん、りんごは、ただのりんごじゃない!招待した友達は、「わ〜すごい。こんなのウチのお母さん作れないよ〜」と手を叩いて喜んでいた。食後にゲームをしたり庭でゴム飛びなどして遊んでいる時、兄が帰って来て、友達が興奮していた。「おめでとう〜」と言って私にプレゼントを手渡す兄の顔に、嫌な予感を感じ、ありがとうが言えない。だって…毎月お小遣でマンガやカードを買って、すっからかんになるのを知っていた。私は、駄菓子屋でお菓子を買うくらいしかないので、お財布の中身が増えていくのも兄は知っていたのだ。友達が「開けてみて〜」と言う。かわいいキャラクターの文具セットが出て来た。ますます怪しい…私は慌てて机の中から財布を取りだした。確実に減っていた。おいっ!嬉しいわけが無い…自分の財布から抜かれたであろう、大事な私のお金で、兄が買ったプレゼント…アホかっ!そして友達にちやほやされ、デレデレする兄に怒る気力を失うのだ。何も知らない友達の間では兄の株が上がっていた。その様子を微笑みながら父さんが見ていた。やがて、卒業シーズンを迎え、父さんが突然、この土地を離れると言い出した。卒業式は本当の別れになり、友達が泣いてくれた。数日後、私と兄は、叔母の家に預けられた。家の処分など終わり次第、迎えに来ると言い残して帰った父さんは、数ヶ月の間、音信不通になり、仕方なく私達も、叔母の家から近くの中学に入れてもらった。父さんの事が心配だった。病気でもしたんじゃないか?怪我をして動けないんじゃないか?いろいろ頭を巡る…叔母は、心配を通り越し、怒りに変わって行くようだった。当たり前だ!子供を二人も押し付け、音信不通なんだから。私も兄も、叔母に申し訳なく、気を使った。なんでも手伝い、料理も教わった。学校も楽しい。父さん、私達を捨てたの?
感想
感想はありません。
「 サチ 」の携帯小説
- 【携帯版】多賀城[たがのき]の携帯サイトが完成しました。
- PC用小説サイト新設のお知らせ
- 「携帯小説!」がスマートフォンに対応しました
- 【状況報告】03/18の管理人現況
- 【ネット復活】更新再開
- 管理人です。
- サイトの新デザインを作ってみました。