いとしき君へ4
その日の夕方、いつきは亡くなった。
懸命な医師たちの、治療の甲斐もなくあっけない最後だった。
遺体が霊安室に運ばれると、妹のみずきはすがり付いて泣いていた。遺体の顔は、ウソのように綺麗で、まだ起き上がりそうな顔色をしていた。
「いっちゃん、コンクールで優勝したら、今度こそフランスに留学するって言ってたじゃない、ねぇ、目を開けてよ、いっちゃん」
そんなに泣かれると、俺は泣くわけにいかず、声もかけられないまま肩に手を置いて、それしかできずにいた。
外は午後から降る雪で、白く染まっていた。
つぎつぎと降り続く雪は、哀しみを知るかのように、冷たく感じられた。
この雪を忘れることは、ないだろう、遺体が霊柩車で運ばれると、しばらく俺は動けないまま、降り積もる雪も感じられないほど、呆然と立ち尽くしていた。
実はコンクールにいつきが優勝したら、俺も一緒にフランスでソムリエ修行をしようと計画をしていた。
それが、一瞬の事故で、全てを失った。
俺のせいだ、あの時、疲れているはずのいつきと一緒に店を出ていたら、こんなことにはならなかったはずだ。
疲れた足取りで、交差点を渡る時に跳ねられたのだろう。
もう後悔してみてもいつきは戻らない、戻らないのだ・・・
俺のせいだ、あいつを一人で行かせたから・・・
全てがモノトーンに写り、悲しくても泣くことさえ、人前では出来ないままだった。
アパートに戻って、いつきのいた匂いの中で俺は始めて泣いた。一瞬の夢が全て失われた夜のことだった。
懸命な医師たちの、治療の甲斐もなくあっけない最後だった。
遺体が霊安室に運ばれると、妹のみずきはすがり付いて泣いていた。遺体の顔は、ウソのように綺麗で、まだ起き上がりそうな顔色をしていた。
「いっちゃん、コンクールで優勝したら、今度こそフランスに留学するって言ってたじゃない、ねぇ、目を開けてよ、いっちゃん」
そんなに泣かれると、俺は泣くわけにいかず、声もかけられないまま肩に手を置いて、それしかできずにいた。
外は午後から降る雪で、白く染まっていた。
つぎつぎと降り続く雪は、哀しみを知るかのように、冷たく感じられた。
この雪を忘れることは、ないだろう、遺体が霊柩車で運ばれると、しばらく俺は動けないまま、降り積もる雪も感じられないほど、呆然と立ち尽くしていた。
実はコンクールにいつきが優勝したら、俺も一緒にフランスでソムリエ修行をしようと計画をしていた。
それが、一瞬の事故で、全てを失った。
俺のせいだ、あの時、疲れているはずのいつきと一緒に店を出ていたら、こんなことにはならなかったはずだ。
疲れた足取りで、交差点を渡る時に跳ねられたのだろう。
もう後悔してみてもいつきは戻らない、戻らないのだ・・・
俺のせいだ、あいつを一人で行かせたから・・・
全てがモノトーンに写り、悲しくても泣くことさえ、人前では出来ないままだった。
アパートに戻って、いつきのいた匂いの中で俺は始めて泣いた。一瞬の夢が全て失われた夜のことだった。
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