ある帰り道の話 2
午後5時25分、軽い警告音と共に、電車がホームへと入ってきた。山手線外回り。広野の自宅がある池袋へは、外回りのほうが近い。
扉が開くと、中から大量の人々が文字通り溢れ出してきた。皆一様に、くたびれた表情を足下へと向け、自身の時間に追い立てられるかのように歩み去ってゆく。広野は、くわえていた煙草を灰皿へ投げ入れ、前から二両目の車両に乗り込んだ。
途端、なんだか奇妙な違和感に襲われるのを、広野は感じた。
車内はいつもと変わらぬ、殺風景を無機質に描いたような情景。普段よりも少し混んでいる気がしないでも無いが、互いに関わり合う意思を微塵も見せない雰囲気に変わりはなかった。
――いや。
違った。
広野は、人々が無表情の奥に見せる、微かな困惑の色を目で辿った。辿って、辿り着いたのは、横長のシートに鎮座した、二人の人間だった。
広野は、なんとなく違和感の正体が分かった気がした。
扉が開くと、中から大量の人々が文字通り溢れ出してきた。皆一様に、くたびれた表情を足下へと向け、自身の時間に追い立てられるかのように歩み去ってゆく。広野は、くわえていた煙草を灰皿へ投げ入れ、前から二両目の車両に乗り込んだ。
途端、なんだか奇妙な違和感に襲われるのを、広野は感じた。
車内はいつもと変わらぬ、殺風景を無機質に描いたような情景。普段よりも少し混んでいる気がしないでも無いが、互いに関わり合う意思を微塵も見せない雰囲気に変わりはなかった。
――いや。
違った。
広野は、人々が無表情の奥に見せる、微かな困惑の色を目で辿った。辿って、辿り着いたのは、横長のシートに鎮座した、二人の人間だった。
広野は、なんとなく違和感の正体が分かった気がした。
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