またあの夢だ。
真っ赤に燃え上がる僕の家
助けを求める家族の声
僕の顔に残った火傷…
すべてを失ったあの日…。

激しい動悸とともに彼、緋村刹那は目を覚ました。彼の体は大量の汗で濡れていた。彼の顔には大きな火傷の跡が生々しく残っている。
「またあの夢か…」2年前、彼は火事により家族を失った。その際、彼の右の頬に大きな火傷を負いその跡は彼の顔に今でもくっきりと残っていた。
「セッちゃ〜ん、
起きなさ〜い！朝ご飯出来てるわよ〜」不意に下から野太い声が聞こえた。

下に降りるといかにも、マッシブな体型の男性がエプロン姿で立っていた。
「んもぅ、お寝坊さんねぇ…セッちゃんは…」
「ごめん、おはようおじさん…」
「おじさんじゃないわよぅ！おばさん もしくはさと子ってよんで?」
彼女（彼？）、佐山さと子（自称）は椅子に座るとごはんをかっこんでいった。「セッちゃん、今日転校初日でしょ？準備は出来てるの？」さと子さんは心配そうな顔で刹那を見やった。
「大丈夫だよ。おじ…じゃないおばさん」
彼女は満足そうに微笑んだ。
「ごちそうさま。」「あら…もういいの？」
「うん、遅れると困るしね」
刹那はいそいそと登校の準備を始めた。「あっ、そうそう、学校についたら理事長さんに挨拶するのを忘れないようにね？」
「わかってるよ」
刹那はさと子の顔も見ずにぶっきらぼうに答え、心配そうなさと子を横目に玄関へ進んだ。
「じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」

彼の暮らしている神絆市（かみきずし）は人口およそ20万人の小さな町である
町唯一の駅である神絆駅から約十分ほどのところにその学校、私立上城学園はあった。
「ここが俺の通う学校か…」
校門の前でパンフレットをひらくもどこになにがあるか全くわからなかった。
「どーしたの？」
彼が校門の前で立ち尽くしていると不意に後ろから呑気な声が聞こえてきた。
「見ない顔だねえ…転校生？」
その声の主は爽やかそうな学生だった。肩に「生徒会」の肩掛けがついていた。「そうなんですけど…ちょっと理事長室がどこかわからなくて…」
「理事長室なら、校門からまっすぐいったとこだよ。一本道だから、まっすぐ」そう言ってその生徒は、指をさした。
「ありがとうございます」
刹那は頭を下げその場をさった。
数分後、彼は理事長室で衝撃の事実を知る事になる。

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