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【鏡】

[1114]  夢幻  2006-12-26投稿
■「君は今、病気を治す事だけを考えるんだよ…。家(うち)の事は俺がするから、何もしなくていいんだよ…。」【N氏】は鬱病の妻に優しく囁いた…。妻の病気の完治を優先に考えてみるとすれば、幸いな事に二人にはまだ子供がいなかった…。

■【N氏】は毎朝、会社に行く前に掃除、洗濯をし、帰宅後は毎晩、食事を作り、妻に食べさせた。「さぁ…、沢山食べるんだよ…。栄養をつけないと、心も元気になれないからね…。」妻の病気は一生治らないかもしれないのに…!!

■【N氏】は担当医に妻の病気がいつ治るかを聞いたが「奥様の生きたいという意欲とご主人の深い愛情です。今はあまりストレスが溜らないように、ご主人が気を付けてあげる事です。」俺の方が倒れそうだ…。こんな生活が一生続くのか…?!
■ある日、【N氏】は家じゅうの鏡を処分した。妻が鏡を怖がるとの理由で…。真実は定かではないが、周囲から見た場合、【N氏】は妻想いの優しい夫と言っても過言ではなかろう…。

■家の雑事を【N氏】がほとんど手際良く片付けてしまう様になってからは、妻は何もする事が無くなってしまった…。ただ食べて眠るだけの日々…。

■「無理しなくていいんだよ…。俺一人で出来るから…、君は休んでいていいよ…。」【N氏】は抗鬱剤で頭がぼんやりしている妻にいつでも、優しく囁いた…。

■妻は薬の副作用、【N氏】が用意する美味で栄養満点の食事や間食類で、徐々にブクブクと肥ってきた…。妻は本来美しい女性だったが、以前の様な美しい面影はもはや…、存在しないと言っていい…。

■「君は今でも綺麗で魅力的だよ…。」【N氏】はそう囁きながら、妻の体調(機嫌)が良い時は徐々に醜くなってゆく妻を丁寧に愛撫し、そして…、抱いた…。

■頃合いを見て、【N氏】は大きな鏡を買って、寝室に置いた…。
■何日かしたある日…、妻は寝室の鴨居に帯綬をかけて首を吊っていた…。帰宅した【N氏】はそれを見て…、満足そうに…、静かに微笑んだ…。 =完=

感想

  • 6203: 短編なのに、読み終わった後これほどゾッとする小説ははじめましてです。 [2011-01-16]

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