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春のため息

[311]  2006-12-27投稿
まだ肌寒い春の朝、僕は鏡をのぞいてため息をついた。顔色は最悪、眼の下にはくっきりとした隈。
『瑞紀!教習所遅れるよ!あら〜ひどい顔。風邪?休む?』母は朝から元気だ。『行く。ただの寝不足だし今週の卒検受けたいから』遠いけれど大学へは車で実家から通うと決めた。母と僕の二人暮らし。父は僕が十歳の時に事故で他界した。ブレーキもかけず、海に転落していたらしい。自殺と疑う人が多い中『ぼんやりした人だったからね。運転してる事忘れて海でも眺めてたんでしょ。』と呆れたように微笑む母に寝不足の理由は話せない。
ここ数日、一晩中枕元で父が話し掛けてくる。小さく遠慮がちな声で何を言っているのかはわからない。初めは父の声を懐かしんでいたが、連日の事に苛立ちを覚えてきていた。
卒業検定は来週に延びた。睡魔に勝てる気がせず、路上運転の教習をキャンセルしたからだ。僕は朝よりも深いため息をつきながら家に戻り、ベットに倒れこんだ。どの位眠っただろう。途中、母が何度か起こしにきたような気がする。
枕元にヒタリと父の気配を感じた。もうため息も出ない。『父さん、勘弁してよ。明日も朝早いんだ。』僕は数年ぶりに父に話し掛けた。

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