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航宙機動部隊35

[1114]  まっかつ  2007-01-08投稿
リク=ウル=カルンダハラ・共和国宙邦星民だ。
もともとは、宙際政界など縁もゆかりもない、寒門中の寒門に生まれている。
彼の父フレグも、良くも悪くも平凡な人物で、本来ならばささやかな幸福と不幸の緩やかなサーフィンを渡り終えて、子孫にみとられながら穏やかな臨終を迎えるのがせいぜいと、本人も他人も確信していた。
リクは九人兄弟の末子だった。故郷たるウル区自体、典型的な下町、と言うよりスラムみたいなものだったから、こう言う家族構成はそう珍しくなかったが、その中でもこれは突出した部類に属していた。
もう一つ特徴的だったのは、女六・男三と言う、同胞達の比率だった。
しかも、歳の離れた兄二人は、早々に家を離れてしまっていたから、実質リクは、多数の姉達に囲まれて育った事になる。
両親は、実質一つ種と化したこの少年を、家計の許す限り溺愛したそうだが、それは多大な副産物の発生源ともなった。
リクが二歳の時、詳しい経緯は良く解らないが、産業船団のクルーだった父フレグが、地元ウル区選出の元老院議員に立てられ、いきなり当選してしまう。
船乗り稼業のカルンダハラ一門は、一夜にして貴族階級の仲間入りを果たしてしまったのだ。
こうして少年の運命は不思議な転変を始める。
更に、姉達の内、半数はやはり独立なり結婚なりして、外に出ていたが、下の三人は、めざとくも愛情配分の不公平に気付き、幼いリクをこっぴどくいじめた。
それも毎日だ。
幸いだったのは、子供は社会全体で養育すべしとの国是が、この軍事大国では末端まで徹底していた事だ。
子供達はめいめい徒党を組んで、お互いの家に何日寝泊まりしても、一向に差し支えなかった。
リクは災厄を避ける為、この習慣を徹底的に活用した。
ここで、再び不思議な巡り合わせが起こる。
リク五歳の時だ。
何があったのか、軍事貴族階級の集住するサイシュギン区から、全く同年の子弟が迷いこんで来たのだ。
この格好の獲物を地元の悪童共が見逃す訳はなく、早速痛め付けにかかったが、既にその連中すら一目置くに到っていたリクが、体を張ってこれを救出してやった。
聞けば、屈指の名門ナーナル氏の跡取りで、先代の早死にとお家騒動のまっただなか、リクとは似たり寄ったりの境遇にあると言う。
嗅覚、と言うべきか、リクはこの同輩と義兄弟の契りを交した。
相手の名前はドルゴンと言った。

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