朝焼け・?
「最上鷹助に物申す」
太い男の大声が、自宅から少し離れた所で素振りしている鷹太郎の耳に入った。
客人か、と素振りをやめ、家に帰ってみるとそこには手甲、脚半をした廻国修行者が〈八相〉に抜き身の刀を構えているではないか。父も抜刀し、〈脇構え〉でもって対峙している。
男が動いた。
一気に間合いを詰め、真っ向から振り下ろした。その速さはまだひよっこの鷹太郎から見れば尋常ではなく、まさに雷と呼ぶにふさわしい。対して鷹助は、ふわりと持ち上げるように振り上げた。こちらは舞いを見ているような雅な印象を与える。
男のひっくり返った雄叫びが響き、刃が肉を切る音が続く。父の刀は男の右脇腹を裂き、躱された男は逆手に持ち替え斜め後ろから突いていた。
男の刀の切っ先がももにずれたのが幸いだ。
「改めて参上。」
つぶやいているような捨て台詞を残し、男は去っていった。
「……う、うぐ…。」
鷹助が男が去るのをみてしりもちをつくのと鷹太郎が駆け寄るのとは一緒だった。
その次の晩、あんどんのやわらかい光を受けて、父・最上鷹助は兵法を説く時とは違った静かさで語り始めた…。
太い男の大声が、自宅から少し離れた所で素振りしている鷹太郎の耳に入った。
客人か、と素振りをやめ、家に帰ってみるとそこには手甲、脚半をした廻国修行者が〈八相〉に抜き身の刀を構えているではないか。父も抜刀し、〈脇構え〉でもって対峙している。
男が動いた。
一気に間合いを詰め、真っ向から振り下ろした。その速さはまだひよっこの鷹太郎から見れば尋常ではなく、まさに雷と呼ぶにふさわしい。対して鷹助は、ふわりと持ち上げるように振り上げた。こちらは舞いを見ているような雅な印象を与える。
男のひっくり返った雄叫びが響き、刃が肉を切る音が続く。父の刀は男の右脇腹を裂き、躱された男は逆手に持ち替え斜め後ろから突いていた。
男の刀の切っ先がももにずれたのが幸いだ。
「改めて参上。」
つぶやいているような捨て台詞を残し、男は去っていった。
「……う、うぐ…。」
鷹助が男が去るのをみてしりもちをつくのと鷹太郎が駆け寄るのとは一緒だった。
その次の晩、あんどんのやわらかい光を受けて、父・最上鷹助は兵法を説く時とは違った静かさで語り始めた…。
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