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航宙機動部隊・実質37

[1018]  まっかつ  2007-01-09投稿
少年は実に、人生も世間も達観しきった所が有った。
生家の収入は悪く無かったが、何せ消費する分母が多過ぎるのだ。
ウル区で栄達を望むなら、軍需工房職人として独り立ちするか、産業船団に入るか、いっそ、任侠の顔役目指して名を売って行くしかない。
リクはなかば仕方なく、第四の道ー悪名高き公職者補充システムの網にかかる事を択んだ。
官員のみならずその子弟まである意味優遇の美称の下、引っ張り込まなければならない程、この国でさえ、正直なり手不足は深刻だったのを、少年は良く知っていたのだ。
ただで高等教育が受けられ、銀河を見れる。
そこにはその年代特有の希望や野心など、みじんも無かった。
地元でうだつが上がらないより多少はマシだろうーその位の気持ちしか無かった。
共和国宙邦は全体主義の軍営国家と、他者には認識されていたが、確かにそれを否定するには、状況証拠が豊富過ぎた。
その中核たる航宙機動部隊は、銀河最強の戦闘集団であるのは間違いなく、為に『奥の一七万隻』と恐れられるに到っていた。
当然の様に、他の星民子弟同様、リクもその中でも最精鋭の機動宙母群要員に入るのを望んでいた。
公職者になるには、古代ローマの軍団と同じく、最前線での兵役が求められる。
願ったり叶ったりではあったのだ。
一応は彼も、元老院階級だ。
一五歳になると、中央域への留学が命じられ、王畿(メトロウォーズ)へと旅立ったのだ。
この時期の彼は、貴族的な洗練された外見と、したたかさを偲ばせる風格を持ち、同年輩の中でもかなり目立ち始めてはいた。
才能的には以外とずば抜けた分野は少なかったが、遣らせて見れば、必ず平均点以上の成果を示し、大きな失敗とは無縁だった。
そんな所が認められたのか、異例の抜擢が働いて、最外縁征討軍への祖国代表として派遣、と言うよりぶち込まれた訳だが、この一見暴挙は今の所成功を収めていると、認めざるを得ない。
少年の処生と社交のセンスは、一0代とは思えない程、老獪だったからだ。
百歩譲っても、貴賓・重鎮達の大半を味方に付けて、潜在的政治力の扶殖を短日時で成し遂げている辺り、後世畏るべし、と言うべきであった。
それでいて本人は、あくまでも冷静、と言うよりどこか傍観者的ですらあった。
『人生万事塞翁が馬』ー数奇な成長期を送って来た彼は、常に運命をそう捉えていた。

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