携帯小説!(PC版)

トップページ >> ファンタジー >> ナイト・オン・ドラグーン【75】話

ナイト・オン・ドラグーン【75】話

[291]  milk  2007-02-22投稿
『オレ、村ノニンゲンミナゴロシニスル』
ゴンザレスは振り向き子供に言った。
しかしその子供は少しも動じない。

無言で自分を見上げてくる。
『あなたの眼…』

『…?』
子供がゴンザレスに近寄る。
『なんて哀しい眼をしてるの?』

ゴンザレスはその言葉に少し怒りを覚えたが…

『ダマレ…オマエもシニタイノカ』

『その哀しい眼は何かに脅えているみたい…』

凄い剣幕で子供を睨むがやはり動じた様子はない。
『怯えル…おレが?』

『えぇ、それはまるで巣の中で震える小鳥のように』

『…?おレノ。産マれた村、オレウマレタ、ミンナ、オレに石ナゲタ…バケモノダト』

不思議な沈黙が流れた。

少女は自分を見つめている。

『だけど…あなたは本当は心の優しい人、仕返しなんてやってしまってはだめ。それはあなた自身も傷つくことになるわ』

視線を逸らそうとしない少女にゴンザレスはうろたえたが…
その瞳を見る度、怒りが薄れていくのがわかった。
不思議と気持ちが落ち着く。
自分は殺されかけたというのに…
仕返ししてはいけないとはどういうことなのだろう。
自分が傷つく?

『ワカラナイ…オレハ…ドコヘイッテモバケモノとイワレル、ドウスレバイイ…?』

自分の殺気が完全に消え去ったのが分かったのか、少女はホッと胸を撫で下ろしている。

『大丈夫、いつかきっとみんなが解り合える日がきます。その日まであなたは笑っていてください』
そう言って少女はほほ笑んだ。

『ワラウ…コウカ?』
顔を引き攣りながらも、ゴンザレスは少女に笑ってみせた。
言いようのない心地よい感覚が己を満たした。

それは、自分がもっとも求めていたものだった。

永い間、本当に寂しかった。
周囲の冷たい、罵声は苦しかった。

何故自分だけが、こんな醜くく生まれてきたことが嫌だった。

己の存在さえも呪い、産んでくれた両親を恨んだ。
だけど、もうそんな事はどうでもいい…

この少女が”暖かさ”をくれたのだ。

『オマエ…ナマエハ?』

『リリーナ。リリーナ・エルスマン』

さらに素敵にほほ笑む。

その日からゴンザレスの毎日が変わった。




感想

感想はありません。

「 milk 」の携帯小説

ファンタジーの新着携帯小説

サーバ維持用カンパお願いします。
WebMoney ぷちカンパ

Twitterで管理人をフォローする

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス