絶対不滅マゾヒズム 5
「昔ここに、ばぁちゃんが住んでたんだ」
言うと、勝手に家の庭に入っていく。
あわてて後を追うと、勝手口の扉を開ける姿が目に入った。
「なんであいてるの?」
「ここ、たてつけが悪いからカギがすぐはずれんの」
にやっと笑った顔は悪ガキそのものだった。
年季の入った古い家には、当たり前だがホコリもチリも満員で、ラーメン屋で必死に汚すまいとしていたピーコートは、あっというまに灰色になった。
それでも、ついてきてしまったのは何故なのか。
促されるまま後に続くと、通されたのはそこそこの大きさの和室。
「じいちゃんは戦争で死んじゃったから、ばあちゃん一人で住んでたんだ、ココ」
「・・・一緒に住んだりしなかったの?」
「うちのオヤジの仕事、転勤ばっかりだったから」
一人で住むには、少し大きすぎる家。
ここに、ずっと一人だったのか。
「でも、夏休みとか冬休みとか、いつもここに来たよ。なんせ郊外っていっても東京だし。長野県民からしてみれば大都会だったからさ」
うちらの大学受ける時も、ここに泊まって勉強したんだ。なんて、聞くのも初めての話をする。
大学受験の時に来た、ということは、少なくとも4年前までは、この家には主がいたということか。
「2年前、死んじゃったんだ」
ちょうど、私たちがであった頃か。
いつも通りの、ヘラヘラした笑顔で言う。
でも、目を細めるのは多分、その色を判らせたくないから。
「病気?」
「寿命、かな。90こえてたし。でさ、」
亡くなる前夜、電話がかかってきたのだそうだ。
いつも通りの元気な声で、
自分に正直に生きなさいよ。と。
その意味がわかったのは、それから数時間後のことだった。
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