携帯小説!(PC版)

35歳

[321]  ガク  2007-03-16投稿
冬らしい冬じゃなかった田舎町の畦道に、あたかも季節ハズレの花が咲いている..。いつからか、抜け殻みたいになった僕の顔。なんとなく血の気がないみたい..。エリート会社でもなく、かといって小さな町工場で働いてる訳でもない。中小企業でそこそこの立場でそれなりの給料も貰っている。嫁と子供も二人いて毎日元気に過ごしている。なんでかな、やる気がない訳じゃないんだけど腹の底から笑えないんだよね。もともとワガママな性格なんだけど、そればっかが理由じゃないみたい..。高校卒業してすぐ自衛隊に入ったあの頃の夢を最近よく見るんだよ。別にいい思い出がある訳でもないのによく見るんだよね。毎日毎日、走って泥だらけで規律に縛られてた。飽き性のくせによく逃げもせず勤まったと正直思う。任期を終えて実家に戻る時、そうだ、そうだよ、間違いない、あの時もこんな冬らしくなかったんだ。バスを降りて実家への道則だって、この畦道をトボトボ歩いていたんだよ。ずっと忘れてたな、こんな事。どうだっていい事なんだけど、何となくニヤけてるんだよ。笑ってる、声には出せないけど笑いが込み上げてくる。知らないおじさんが変な目でこっちを見てる、関係ないじゃん。なんだか笑っちゃうんだよ、笑えるんだよこんな事で。体の力がスーッと抜けてく気がした。体に新しい空気が入っていく気もする。タバコでも一本吸ってみる、旨いよ旨い。少しヒンヤリした風にタバコの煙りが溶けていくんだ。なんだか気分がいいんだ。僕って単純だね、だってこんな事で気分良くなるなんて。訳を探すのはもうやめよう、理由なんてどうでもいいや。そろそろ帰ろうかな、お腹も空いたし子供にも会いたいし。嫁の手料理なんだろな。単純だろ、でもいいんだよそれで。だって僕は今日、35歳になったんだから。

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