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時の町リング 後編

[306]  夢見大  2007-03-16投稿
私は苦笑いをして、前にいる娘に言った。
「私はひどい仕事をしていたと思うよ。なぜなら、首筋にうっすらと切り傷があるからね」
ミカトは、私の首筋を見て、驚いた表情を見せた。知らなかったんだろう。無理もない。今まで、誰にも言ってないんだ。なぜ、今になって言うんだろうか、自分でもよくわからない。
ミカトはそれから一向に喋らず、黙って私が注いだきつめの酒を飲んでいた。
三杯目を注ごうとした時、口を開いた。
「私が泣きたい理由知りたい?」
私は首を振った。理由は私も知っているからだ。ミカトは、その私の様子を見て、「そう」と呟いた。
私も、ミカトもしばらく黙っていた。ミカトは酒を飲みながら、私はグラスを磨きながら。
町の中心の時計台から、荘厳な響きが聞こえてきた。一回、二回、三回…最後の鐘は中途半端に止まった。
昨日から、あんな調子だ。覚悟を決めておけと、世界が言っているのかもしれない。私は覚悟はしている。しかしミカトは、まだ若いから覚悟できてないのだろう。
私は、少し憤りを感じた。なぜ、世界は時を止めようとしているのだろうか。
前を向くと、ミカトは微笑みながら、止まっていた。私も、考えを停止して、ミカトを見ながら止まった。完

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