■新地の夜空から(前書き)
此は大阪。
西日本一の繁華街・・・
それが北新地。
経済界で成功を収めた者達、そう、『生きる経済』とでも呼ぼうか。
バブル期を過ぎたこのご時世、彼等にとって不況などとは何処吹く風である。
彼等は毎夜、己の権力や財力を武器に今日もこの街を練り歩く。
そんな彼等をいつも絶やさぬ笑顔と軽快なトークで和ます、それが私達、ホステスの仕事である。
北新地は大きく『上通り』と呼ばれるメイン通りと『本通り』と呼ばれる2本の通りによって構成されている。
中でも、上通りには座って5万を越える一流高級クラブが軒を連ねて並んでいる。
そんな高級クラブに私が入店したのは1年程前のことである。
今更思い出したくもないが、私がこの高級クラブに入店することになった経緯はまさしく波瀾万丈なのである。
そして善くも悪くも、この選択が私の人生の恐らく半分以上を変えたことは間違いないのである。
そして、何もかもを失った今の私に遺された使命は、彼と出会い、彼を知り、彼と過ごした日々を綴ることではないのかと思う。
この漂白の世界で
唯一彩りを与えたひとへ。
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