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MURASAME

[637]  あいじ  2007-03-20投稿
吸血鬼無想?

蔵王丸は、かれこれ小一時間もの間、書類とにらめっこをしていた。溜め息を吐き目をこすっても目の前の現実は消えなかった。
「まいったなぁ…」彼が頭を悩ませているのは吸血鬼の問題である。日本の吸血鬼は外国のものと違い、知性を持ち、無用に人を襲わない。現在は数も減り、「人妖不可侵条約」のもと保護されている存在である。彼らも外国のものと同じく血を栄養としているため妖庁は毎年献血を行い、彼らに血を流用している。
「お茶のお代わり持ってきました」
部屋に入って来た女性がお茶を持ってきた。
「ありがとう、有栖川くん…」
有栖川咲子、蔵王丸の秘書兼お茶汲みである。
「どうしたんですか主任?元気ないですよ」
咲子の言葉に蔵王丸は苦しむように唸った。
「なにね…巷で起きてる吸血鬼事件…知ってる?」
「あの体中の血を抜かれて殺されたってやつですか?…でもまさか、本物の吸血鬼じゃないですよね」
咲子は笑いながら云った。
「それが、本物っぽいんだよ」
蔵王丸はお茶を啜るとにがそうに顔を歪めた。
「なんでも上の調査によると、かつて曲妖になった吸血鬼に襲われた死体とそっくりなんだと…ホラ、吸血鬼って今あんまりいないじゃん。でも、吸血鬼側かそんなことするやつはいないってら抗議がきちゃって」
そういうと蔵王丸はうなだれた。咲子はお茶を片付けながら言った。
「そう言えば、吸血鬼で思い出しましたけど…主任にお客様です」
「誰だい?」
再び書類とにらめっこを始めた蔵王丸は顔をあげた。
「確か…イギリスからきたヴァンパイアハンターとか言ってました」
「またタイムリーな…」
蔵王丸は煙草をくわえた。しかし咲子に睨まれ火が点けられなかった。
「男?」
「女の子でした。背中に棺桶しょって…まだ高校生ぐらいでしたね」
「あっ…!」
蔵王丸が思い出したように叫んだ。咲子は驚き、お茶を落としそうになった。
「有栖川くん…悪いけど急いで幸司君と天馬君を呼んでくれ。緊急の仕事だ」
つづく

感想

  • 6543: かなり面白そう? [2011-01-16]
  • 6557: MURASAMEといいクビカリといい殺し合いごっこといいホラーじゃなくてアクションになってないか? [2011-01-16]

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