オリーブ 〜第一章〜
―あの日から俺の時間は止まっている。その針は冷たく、恐ろしいほど真っ直ぐに心を突き刺したまま動く気配がない。
名前、松永ヒナタ。教育学科の大学2年生。別に目的や夢があるわけじゃない。親から離れて、自分の空間が手に入ればそれで良かった。
携帯の目覚ましにセットした、どこの国の曲だか分からない音楽だけが唯一俺を現実に引き戻してくれる。
いつものようにそっとタバコに火を付け、大きな鏡の前で跳ねた前髪にワックスをなじませる。するといつものタイミングで後ろから声が掛かる。
「おはよ…今日は早いね。」
「ん?あぁ、今度から遅刻したら単位やらないって教授がカンカンでさ。」
「あはは(笑)だからいったじゃん。もーちょっと真面目に行きなさいって。」
「…うるせーな。」
彼女はミキ。入学式の時俺の隣に座っていた。それからなんとなく声を掛けて、なんとなく付き合って、気付けば同棲して半年以上。ミキは自分の授業がない日でも、眠たい目を擦りながらつきあって起きて来てくれる。
大きな声では言えないが、俺はそんな優しいミキが大好きだった。
BEAMSのジャケットを乱暴に羽織り、安全ピンで開けた、まだ塞がりきらない耳穴にピアスを通す。そして自分を隠す程のキツい香水を振りかけると、俺は玄関に急いだ。
するとミキが後ろの方から、
「今日はあたしがおいしい晩御飯作っといたげるから頑張って来なよ!」
と言ったので、俺は力一杯ブサイクな顔で、
「おう!」
とだけ応えた。
玄関を開けると、五月の陽気が、こぼれる雫のように体に染み込んでいった。
名前、松永ヒナタ。教育学科の大学2年生。別に目的や夢があるわけじゃない。親から離れて、自分の空間が手に入ればそれで良かった。
携帯の目覚ましにセットした、どこの国の曲だか分からない音楽だけが唯一俺を現実に引き戻してくれる。
いつものようにそっとタバコに火を付け、大きな鏡の前で跳ねた前髪にワックスをなじませる。するといつものタイミングで後ろから声が掛かる。
「おはよ…今日は早いね。」
「ん?あぁ、今度から遅刻したら単位やらないって教授がカンカンでさ。」
「あはは(笑)だからいったじゃん。もーちょっと真面目に行きなさいって。」
「…うるせーな。」
彼女はミキ。入学式の時俺の隣に座っていた。それからなんとなく声を掛けて、なんとなく付き合って、気付けば同棲して半年以上。ミキは自分の授業がない日でも、眠たい目を擦りながらつきあって起きて来てくれる。
大きな声では言えないが、俺はそんな優しいミキが大好きだった。
BEAMSのジャケットを乱暴に羽織り、安全ピンで開けた、まだ塞がりきらない耳穴にピアスを通す。そして自分を隠す程のキツい香水を振りかけると、俺は玄関に急いだ。
するとミキが後ろの方から、
「今日はあたしがおいしい晩御飯作っといたげるから頑張って来なよ!」
と言ったので、俺は力一杯ブサイクな顔で、
「おう!」
とだけ応えた。
玄関を開けると、五月の陽気が、こぼれる雫のように体に染み込んでいった。
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