−「さよならは今だけだよ。また会える…」
これが私の耳に届いた最後のあの人の言葉だった…−


「おい！そっち寒いだろ。こっちなら風あたらないよ」

私は雪降る１２月のある日終電を待っていた。
終電を待っていたのは私と声を掛けてくれた男性だけだった。

「ありがとうございます。」

私は彼がいる屋根の中に入り、隣でうつむきながら電車を待った。

「寒いね。でも雪綺麗だなぁ。オレ雪好きなんだよね」

タバコをふかしながらそんなことをつぶやく綺麗な横顔と雪の白さがとても印象的だった。

「私も…雪好きです」
とっさに出た言葉だった。

ほんとは雪なんて寒くて冷たいから嫌いなのに、その人と雪が綺麗に見え過ぎて思わず出た言葉だったのかもしれない。

「只今電車が雪のため、到着が遅れております」
アナウンスがながれた。田舎はこれだから困ってしまう。

「遅れてるのか…じゃあちょっとオレとゲームしない？」

無邪気な笑顔で私に言ってきた。
「はい」と思わず即答してしまった。

私はこの人にはどんなゲームでも勝てない気がした。全ての世界を見透かしているような目で見つめられると胸が高鳴るのが分かった。

「じゃあオレの歳を当ててみて。」

「私より年上っぽいから…２３歳かな…？」勘で言ってみた。

「残念。おしい。２２歳だよ」

やっぱり当たらなかった…。

「じゃあ今度はオレが当てるよ！…君の歳は２０歳かな？」

「当たりです！なんで分かったんですか？」

「実はオレ君のこと前から知ってたんだよ」

思いもしない言葉に驚いて、心臓の奥がキュッとなったのが分かった…

「え…？」

「実はオレ前世の記憶があるんだ。信じないかもしれないけど、君とオレは前世でも出会ってる。」

この人は誰にでもこんなことを言ってくどいてきているのかと思った。その綺麗な顔立ちと見透かした目と巧みな話術に私もとりこになってはいけないと自分に言い聞かせた。

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