19х2
変化のない毎日の中で何気なく車を停める。あの頃は決して吸うことのなかった煙草に当たり前のように火をつけて20年前のCDをカーステレオに入れる。 …あれから19年が過ぎて僕は38になった。19の僕には人生で唯一愛した人がいた。両親とうまくいかない僕は15で家を出てバイトに明け暮れていた。そんな時彼女と知り合いいつも一緒にいるようになった。同じ歳の彼女はあまり感情を出さない僕の心を見透かし優しい笑顔でいつも包んでくれた。彼女と過ごす毎日は幸せだった、バイクショップでバイトをしながらレースに没頭する僕をいつも励まし貧乏だった僕の心を満たしてくれた。失敗を繰り返しながら少しずつ結果が出せるようになり収入を得るようになった僕は彼女の19の誕生日にプロポーズをした。彼女はいつも通りの優しい笑顔で僕を包み込み何度となく頷いてくれた。…結婚式を半月後に控えた19の夏事故に遭い彼女は逝ってしまった。結婚式を挙げる予定だった日の翌日僕は皮肉にも自身のレースキャリアで最初で最後の優勝を経験した。…死ぬ気だった、彼女を失った絶望の中で昔見た映画の主人公のようにレース中に死ねればいいと思って走って死ねなかった僕はレースを辞めた。優勝カップを彼女の墓前に捧げ思いきり泣いた後僕は地元を離れ僕のことを知る人など誰もいないところに移り住みサラリーマンになった。 そして今僕はとても平凡な38になっている。彼女をなくして自分も死にたいと願った19から倍の年数を生きてしまった。その間彼女以上に愛せる人などいなかった、彼女以上の笑顔も優しさも見ることもなかった。結局僕はずっと彼女の思い出と今も生きている、多分これからも…
彼女の大嫌いだった煙草を吸いながら彼女の大好きだった曲を聴く。そして今でも大好きな彼女を想う
あの日から19年後の今年の夏僕はあれから初めて彼女の墓前に帰ろうと思う …19х2生きた僕を見て彼女は笑ってくれるだろうか
あの頃の笑顔
加代子…
彼女の大嫌いだった煙草を吸いながら彼女の大好きだった曲を聴く。そして今でも大好きな彼女を想う
あの日から19年後の今年の夏僕はあれから初めて彼女の墓前に帰ろうと思う …19х2生きた僕を見て彼女は笑ってくれるだろうか
あの頃の笑顔
加代子…
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