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S×S 1話

[410]  2007-03-25投稿
【カッ!】【キュキュ!カッ!】
夕刻、小さな体育館に木霊する音。
夕陽が入らないようカーテンの閉じられた一角で、その二人は戦っていた。

一人は攻撃…卓球台の近くで、少しでもボールが浮いたら、ドライブやスマッシュを撃ち込む。

一人はカット…卓球台から2m以上離れてボールを斬っている。
斬ることで返しにくいように回転をかけ、また、相手の次の攻撃の威力を下げている。

【バキッ!!】
直径4cmのボールが、白い光の筋になって卓球台の上を走った。

『くっそ!!』
息をきらせて、少しぽっちゃりした少年が悪態をついた。

「また俺の勝ちか」
茶髪のガラの悪い少年がニヤリと笑った。

『最後…前髪が目に入った…』
「言い訳か?…じゃあ切りゃいいだろ」
『…やだ』
「じゃ、負けんな」
『ぬぅう…慎治にゃこの痛さはわからん!』
「俺なら切るってんだよ!…帰るぞ、真也」

真也は目に入りかけてる前髪をいじりながら、渋々帰り支度を始めた。

真也が卓球を始めて5年。同時期に始めた慎治は真也より戦績がいいのに、真也は試合で敗けが多い。

練習では真也が勝つことも少なくないが、慎治の身体的ポテンシャルは、真也にはない。

反射、判断力において、慎治が上なのだ。

「…お前も攻撃しろ」
『…できないの、知ってるだろ?』
「教えてやる」
『オレは…カットとサーブでいい』

真也が無愛想に言った。

「ハッ!強情なこった!」慎治は何故か嬉しそうに笑う。

『昔から君はSPEED、オレはSPINと決まっとる!』
「…誰が決めたよ…」

不良な感じの慎治と、温厚な感じの真也は、肩を並べて歩いていた。

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