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不透明なせかい1

[417]  十和  2007-03-27投稿

渡された薬はマーブルチョコだった。


【不透明なせかい】

 水色。そらのいろ。
トリプタノール10、という名前らしい。――――うつの、薬だった。
錠剤がこんなに毒々しい色をしてていいものか。こんなものを飲むほど俺の病気は重いのか。

「学校は無理しなくていいよ……まずは病気を治さなくちゃいけないからね」
 中年ほどの、それでもかなりの美人なカウンセラーは俺のセーラー服を見てそう言っていたのを思い出す。
俺――別に女装趣味でも性同一障害などでもない。
ただ、『おんなのこ』という自覚もない自分にはこれがちょうどいいように思えたのだ。


 ……叔父が、死んだのはいつだったろうか。特に悲しかった記憶はない。
ただその数か月後から発作が始まった。長い長い、発作が。

自分もいつかは死んでしまうという事がとても恐く思えたのだ。

体もなくなり感覚もなくなり『自分がなくなる』という自覚もなくなる。
死んだ後は暗やみだと言うが、『自分』がなくてどうやって『闇』が知覚できるだろうか。

それが果てしなく怖い…いや、怖かった。

今は別に、どうとも思わないが。
……病気で広がった世界の話を、しよう。

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