人生逆転ブローチ
一度でも、僕は認められたことがあっただろうか。
「ちょっとどこ見て歩いてんのよ」
「…すみません」
「気を付けてよね」
この女性もきっと、僕を一目見ただけで分かったんだろう。
僕が何も言えないということに。
小さい頃から弱虫で、女性にもモテなかった。
生きている価値のない人間。
でもこんな僕にも、帰る場所がある。
「ただいま、ヒロ子」
「おかえり」
幼なじみのヒロ子。
訳あって一緒に暮らしている。
きっと僕のことを好いてなんてくれてないだろうけど、それでも。
いつもヒロ子だけが僕の救いだったんだ。
そしてヒロ子は、僕の唯一の欲求。
そんな、ある日のことだった。
「…なんだこれ…」
僕は会社が休みでやることもなく、一日中パソコンをいじっていた。
行き当たったサイトに、見慣れない広告があった。
「あなたの人生逆転させます…?」
"人生逆転ブローチ"
アクセスしてみると、緑色のブローチの写真。
「これを付けると、周りの人のアナタのへの価値観が逆転します…どういうことだ?」
くだらないと思いながらも僕はなぜかどんどん読み進めていた。
そして気づけば僕は、購入ボタンをクリックしていたのだ。
ツヅク
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