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S×S 3話

[284]  2007-03-29投稿
『やっぱさ、スピンだけじゃ…』

真也が寂しげに呟いた。

「んー…?」
『オレも…スピードが欲しかったなぁ。…野性的な勘も…強い精神も…』

慎治は暫く黙った後、少し笑いながら言った。

「…俺なぁ…最近ドライブの練習してて、初めてお前が言ってた意味わかった」『言ってた…?』
「スピンは全てのボールの元だ!…っつってヨ?」
『…けど、スピンだけじゃあ…攻撃しなきゃ…勝てない…!』

真也は歯噛みして、拳をにぎった。

「おぉそうだ!俺お前に教えて欲しいことあったんだよ!」
『へ?』

真也は目を丸くした。プライドの高い慎治が自分に教えをこうのは約3年ぶりじゃないだろうか。

「よくスピンがかかる打ち方ってヨ、ラケットのどこで打ちゃいい?」
『ぷっ…君いつもラケットのど真ん中でサーブもするもんな!』

真也が久々に笑った。

「うっせーな…どこなんだよ!?」
『はいはい……えーとなんつーか…そうだ!手でいうとこの小指からボールを擦って親指までボール転がすんだよ!』
「途中で放れるだろ!」
『だからボールを押さずに、斬ることを考える』

真也はその日、就寝まで笑顔だった。



(これが…あの質問の意味かよ!)

真也は顔がすこし青ざめてした。心音が聞こえそうなくらい、瞬きもできない。
慎治のボールは一度慎治のラケットに隠れたかと思うと、そこから急激に曲がり、台の端のホワイトラインに喰らいついた。

「どうよ!?スゲーべ!?」『なんだよ…90度近く曲がったぞ!』
「シュートドライブ…だっけ?」
『…逆じゃね?……えーと…スライダードライブ?』「野球かよ…」

真也は目をかなり開いて慎治を見た。…睨んでるに近い。

「もっかいやってやろうかよ!」
『上等だよ…斬る…!』

慎治がラケットをフォアサイドに構え、真也は腕を伸ばしてラケットで慎治を指した。

(これが君の悩んでた、その答えか…慎治!)

真也は成長するライバルが恐ろしく、また面白くなって思わず笑った。

(男の性か…)

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