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自殺自演、、〔五曲〕

[606]  ホッチ  2007-04-04投稿
彼の家までは隣の県まで行かねばならず、電車にて移動する。

通勤ラッシュの時間帯ではないが、座席は空いておらずドア近くで落ち着く、、。

アナウンスが鳴り、お決まりの注意事項が続く。
外へ目を向けると、手荷物を抱えた老女がこちらへ歩いてくる、、見た目七十歳近いであろう。

容赦なくドアは閉まろうとしている、、。

何か思ったわけではない。考えるよりも先にドアに手を当て、閉じるのを防いでいる自分がいた、、。

彼女は私の行動を見、電車に乗り込み軽く会釈した。

電車は進みはじめ、次の駅の名を告げる。
後、車内は雑音のみとなった、、。

トントン、、

背中をツツかれる、先程の老女だ。

「ごめんね、、ありがとう。私なんかのために優しくしてくれて。」

どこかで聞いたセリフ、、。

「昔は当たり前の行為だったのに、最近は皆自分のことしか見えてなくてね、、。

でも、まだ人を気遣う優しい人がいる。
その心をいつまでも大切にしてね。お嬢さん。

本当にありがとう。」

何か暖かいものが胸に込みあげる、、。
『ありがとう』という言葉、、それ一つでなんて救われるんだろう。

次の駅で彼女は降りていった、最後にもう一度こちらに会釈し、、私も手を振り応えた。

曲に合わせるかのよう電車は揺れる、、。
目を閉じ流れる音の景色を想像する、やわらかな風が吹いた気がした、、。


目的の駅へ到着し、私は深呼吸しノビをする。

よし、行くか!!

地図を片手に歩き出す。昨日の雨は嘘のように雲一つない良い天気だ。

こんな日に洗濯したらよく乾くのにな、、なんだか自分がおばさんに見えてきた。

彼の済むであろうアパートへ到着、、ここまで来て悩む。
しばし入り口前でうろうろ、、、。

「よしっ!!」
意を決してチャイムを鳴らした、、

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