傷に刻みし果てなき絆/1
――大丈夫か!?
炎に包まれる洋風の城内で、彼は叫ぶ。
その彼の視線の先には、白色のドレスに身を包んだ、女性の姿があった。
――大丈夫、です。
明らかに衰弱したような、力の無い声で、女性は呟く。
――もうここは、もたない。
――そのよう、ですね。
女性は力無くうなだれる。
それを見て彼も、視線を落とし、肩をすくめる。
その双方の姿を見ると、今の状況が、どういう意味でかは知らないが、絶望的な状況だということが分かった。
――もう、無理か…。
彼のその呟きに、女性は何も答えなかった。
そしてその代わりに、女性は呟く。
――来て、ください。
女性は意を決した、迷いも何もないような表情で、彼にささやく。
彼は、そのことを何も問わず、ただ、頷いた――
それは、幻想的で、夢のような、
記憶に無い、出来事だった――
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