虹色の月?
後から医者に聴いたが,僕の隣でひっそりと息を引き取ったのは僕の彼女だそうだ。僕の中からは彼女と過ごした時間も,記憶も,名前と一緒に綺麗さっぱり姿を消していた。
「あなたのお名前は?」
毎日毎日,僕は同じ質問ばかりを繰り返されていた。いい加減うっとうしく,僕は「分からない」を繰り返した。
本当に分からないのだから仕方がない。
その日の午後,僕の家族と言う人達がやって来た。僕は生きていると言うのに,その人達は泣きに泣いた。僕はどうしようもなく,その人達が泣き止むのをひたすら待った。
僕の名前が判明した。僕は,『太田翼』と言うらしい。
「本当に,あんたの虹色の月が割れなくてよかった……」
僕の,祖母と言う人が涙ぐみながら話した。
「虹色の月?」
僕は,あの手の中で割れていった虹色の満月を思い出した。
「そうじゃ。いつか翼にも話したろう。この世とあの世の間に人の心が集められている世界があるとな。そして,その人の心の奥には虹色の月があると。それは人が死ぬとき,砕けて無くなってしまうんじゃ。……丁度,お前さんの彼女の,結衣さんのようにな……」
祖母は言いにくそうに言った。
そこで初めて,僕はあの『僕』を映した焔は彼女のものだった事を理解した。
彼女は最後まで僕を想って死んでいったのだ。
それから一ヶ月もすると僕は無事に退院した。しかしまだ完全には記憶は戻っていない。
今日,僕はぶらぶらと散歩をしている。何か刺激があると記憶を取り戻すらしいからその刺激を探しに。
と,突然,車の鋭いブレーキ音が耳をつんざいた。一台の自転車が道路に飛び出したのだ。
「危な──!」
ピシッと何かが割れるような音がした。それと同時に,僕の頭の中に記憶が,蛇口を一杯一杯捻った水のように溢れ出した。
色々な事,彼女の笑顔。
そして,隣で死んでいった冷たい彼女の姿──。
波打つような頭痛がした。それと同時に,僕は気を失った。
「あなたのお名前は?」
毎日毎日,僕は同じ質問ばかりを繰り返されていた。いい加減うっとうしく,僕は「分からない」を繰り返した。
本当に分からないのだから仕方がない。
その日の午後,僕の家族と言う人達がやって来た。僕は生きていると言うのに,その人達は泣きに泣いた。僕はどうしようもなく,その人達が泣き止むのをひたすら待った。
僕の名前が判明した。僕は,『太田翼』と言うらしい。
「本当に,あんたの虹色の月が割れなくてよかった……」
僕の,祖母と言う人が涙ぐみながら話した。
「虹色の月?」
僕は,あの手の中で割れていった虹色の満月を思い出した。
「そうじゃ。いつか翼にも話したろう。この世とあの世の間に人の心が集められている世界があるとな。そして,その人の心の奥には虹色の月があると。それは人が死ぬとき,砕けて無くなってしまうんじゃ。……丁度,お前さんの彼女の,結衣さんのようにな……」
祖母は言いにくそうに言った。
そこで初めて,僕はあの『僕』を映した焔は彼女のものだった事を理解した。
彼女は最後まで僕を想って死んでいったのだ。
それから一ヶ月もすると僕は無事に退院した。しかしまだ完全には記憶は戻っていない。
今日,僕はぶらぶらと散歩をしている。何か刺激があると記憶を取り戻すらしいからその刺激を探しに。
と,突然,車の鋭いブレーキ音が耳をつんざいた。一台の自転車が道路に飛び出したのだ。
「危な──!」
ピシッと何かが割れるような音がした。それと同時に,僕の頭の中に記憶が,蛇口を一杯一杯捻った水のように溢れ出した。
色々な事,彼女の笑顔。
そして,隣で死んでいった冷たい彼女の姿──。
波打つような頭痛がした。それと同時に,僕は気を失った。
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