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最後の嘘2

[606]  カトリ  2007-04-10投稿
会場で悟はすぐに由紀をみつけ声をかけた。
「由紀。」
懐かしい声、ずっと聞きたかった声、愛しい声…
由紀は込み上げてくる涙をこらえることができなかった。
「…会いたかった。ずっと。」
二人はすぐに会場を抜けだした。
「どっか、飲みにいく?」

悟が由紀の顔をのぞきこむ。
「うん。」
ハンカチで涙を拭う由紀の左手の薬指には指輪が光っていた。
「…いつ、結婚したん?」
バーのカウンターで横に並ぶ由紀に悟は聞いた。
「大学卒業してすぐ。子供も二人いる。」
「そっか。幸せ?」
「うん。」
悟が知っている由紀の笑顔はそこにはなかった。
結婚して、子供がいて、幸せだという由紀。
それでも、悟は、ずっと言えなかった言葉を口にした。

「由紀、俺、由紀が好きだよ。
ずっと好きだった。今も変わらない。」
由紀は悟から視線をそらした。

「…人妻をからかわないで。」
悟は由紀の手を握り
「俺と付き合って。由紀。」
悟の手を振り払う
「怒るよ。」
悟はもう一度握りなおす。
「本気。ちゃんとこっち見てよ。」
由紀を真っ直ぐに見つめる悟は、あの頃と変わっていなかった。長いまつげ、くっきり二重まぶた、あごの小さなほくろ…
全て、愛しかった。
「わたし、結婚してるんだよ?」
「うん。」
「家族が一番大事なんだよ?」
「うん。」
「……」

不倫
人の道に反する事だと由紀は自分に言い聞かせた。

沈黙の後に、由紀が発した言葉


「私も悟と一緒にいたい。」


次の瞬間、悟は由紀の手を引き席を立った。
会計を済ませ、店を出るとすぐにタクシーを拾った。
「…悟?
どこにいくの?」
「うち。」
「ちょっ…!無理!無理!! 」
慌てる由紀の手を握ったまま悟は
「いやがる事したりしないから。由紀の時間の許す範囲でいいから一緒にいて?」

躊躇していた由紀の手が悟の手を握りかえした。
「…うん。」

マンションの玄関を入ると、悟はすぐに由紀を抱き寄せキスをした。

由紀は戸惑っていたが、キスを重ねる度に、悟を受け入れた。

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