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最後の嘘5

[641]  カトリ  2007-04-13投稿
悟と別れてから、由紀はしばらく弾いていなかったピアノを弾くようになった。

別れを告げられても、由紀は何も言えなかった。

言う権利がなかった。

それでも、あの時、またいい友だちでやり直そうと言っていたら?

悟とのセックスを拒まなければ?

バーのカウンターで、一緒にいたいといわなければ?
クラス会に参加しなければ?


悟と関わった全ての事を否定せずにいられなくなっていた。

何もかも自分が悪いのに、最低だ…

夫も子供もいる身で、他の男性を愛しい、と思う事自体、最低だ。

自分を責め続けた。
家族には何も知られていない。
それでも、いっそ誰かに責め立てて欲しい程だった。

その気持ちをピアノにぶつけていた。


12月
あれから2ヶ月ほどたち、由紀の気持ちは少しずつ落ち着きを取り戻していた。
携帯に入っていた、悟の番号、アドレスは消去した。つながるものを自分から切り離した。
きっと、悟の電話を鳴らせば悟は出る。呼び出せば来てくれる。友だちとしてならば。

逆に悟の方から、連絡がくる事はないと由紀は確信していた。

それが悟の優しさだという事は分かっていた。

中途半端に優しくすれば私を苦しめる…
そういう考えを悟はする人だという事は由紀が一番知っていた。
昔から変わらない、悟の優しさ。


今までと変わらない日常。
夫がいて、子供たちがいて、自分がいる。

朝、子供たちと夫を送り出し、自分も仕事に出かける。帰って来て、食事をする。

けれど、水曜日は違っていた。

空白…

時間が2倍、3倍長く感じた。
また、ピアノを弾く

それでもまだ、目を閉じると悟が微笑んでいる。

感想

  • 6794: 続きが早く読みたい!!! [2011-01-16]

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