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航宙機動部隊49

[721]  まっかつ  2007-04-13投稿
同日23時―\r
『何?その話、本当か!?』
燗熟し果てた中央域文明圏三千億人士の耳目を満足させるのに、長年ネット集合体は悪戦苦闘を余儀なくされていた。
だから、と言う訳ではないが、今回の帝国と星系合衆国との全面対決は、彼等からすれば久々のビック・チャンスだったのだ。
しかも、
『パレオス星邦議長が太子党共への反対の音頭取りか?こいつはついてる!早速取材陣を組め!』
総合娯楽番組配信ネット《ギャラクシーキャスティング&ブロードバンド》から当地に派遣された一団の主、A=キネは狂喜乱舞した。
望むべき展開が望まずして向こうからどんどんやって来てくれているのだ。
『おい!ここは宝の山だぜ!お前ももたもたしないで早く応援に行け』
パネルカードを閉じると、すぐ前でデスクワーク中だったマイヤーカメラマンの肩を叩いた。
『しかしプロデューサー。ビシネスとは言えあこぎなもんですよねえ。他国の不幸・民間人の犠牲・そして戦争。本来は否定すべき物が全て利益に還元される―誰かの血と涙がないと娯楽が成立しないとは』
『バカ野郎!だから良いんだよ』
カメラマンのぼやきをA=キネはにべもなく跳ねつけた。
『お前この仕事何年やってるんだ?分かっちゃいないねえ。長年の平和と繁栄に飽きた星民は、だから刺激を求めているんだよ!それを俺達が提供する、その何処が悪い?』
『ですが、その為に誰かが不幸になった場合、責任は誰が取るんで?』
『俺達は責任取らなくて良いの!責任は如何に視聴率を稼いでスポンサーと株主を富ませるかに有るんだから!そんな論議は社会改良派の気違いにでも遣らしとけ!良いか?需要が有るから供給があるんだぞ』
地球時代末期以来マス・コミは長足の進歩を遂げた。
そしてその本質は少しも変わっていなかった。
倫理・道徳面では寧ろ退化すらしたと言う指摘がなされてもいる。
商業・成果原理主義のそこは総本山と言っても良かった。
大衆心理を煽り、金を巻き上げる巨大な装置と化していたのだ。
そう言う意味ではA=キネは優秀な業界人と評価すべきだった。
そこへ彼のパネルカードがアラームを奏でた。
取材陣集合完了の合図だった。
『さあ、とっとと行くんだマイヤー。お前が行かなきゃ現場が回らんからな』
椅子の下に置かれた機材を揃え出した部下に、A=キネは激を飛ばした。

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