ヤス#35
ヤス#35
そして、翌日、船便で届けてもらわなければならないのだ。つまり、このトンカツは昨日から決まっていたという事になる。
ヤスの家は貧困である。余程の事でもない限り、肉など食卓に上がらない。ヤスはかぶりついた。久しぶりに食するトンカツに我を忘れている。
「美味いか?ヤス」
父が聞いてきた。
「うん。当たり前だよ。美味いに決まっている」
「ハハハ。それだけ食欲があれば大丈夫だろう」
そう言ったのは祖父の森一である。
我に返ったヤスが食卓を見回すと、トンカツは自分の分しか無いようだった。
「お母さん…みんなの分は無いの?」
「ヤスだけよ」
母の純子は微笑みながら答えた。(そこまで貧窮しているのか…)と思ったヤスの食欲が萎えてしまった。箸をおいてしまった。
「どうしたの?ヤス。ヤスの好きなトンカツよ。食べなさい」
ヤスは涙が出てきた。家族がヤスの為だけに、トンカツを食べさせようとしてくれた気持ちに、嬉しさと、貧乏への怒り、そして、悲しみが、彼の小さな胸を締め付けてしまった。
「うっ、うっ…俺の為に…ううっ、ありがとう」
そして、翌日、船便で届けてもらわなければならないのだ。つまり、このトンカツは昨日から決まっていたという事になる。
ヤスの家は貧困である。余程の事でもない限り、肉など食卓に上がらない。ヤスはかぶりついた。久しぶりに食するトンカツに我を忘れている。
「美味いか?ヤス」
父が聞いてきた。
「うん。当たり前だよ。美味いに決まっている」
「ハハハ。それだけ食欲があれば大丈夫だろう」
そう言ったのは祖父の森一である。
我に返ったヤスが食卓を見回すと、トンカツは自分の分しか無いようだった。
「お母さん…みんなの分は無いの?」
「ヤスだけよ」
母の純子は微笑みながら答えた。(そこまで貧窮しているのか…)と思ったヤスの食欲が萎えてしまった。箸をおいてしまった。
「どうしたの?ヤス。ヤスの好きなトンカツよ。食べなさい」
ヤスは涙が出てきた。家族がヤスの為だけに、トンカツを食べさせようとしてくれた気持ちに、嬉しさと、貧乏への怒り、そして、悲しみが、彼の小さな胸を締め付けてしまった。
「うっ、うっ…俺の為に…ううっ、ありがとう」
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