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私の大切な人

[323]  亜紀  2007-04-15投稿
空を見ると思い出す…

―あなたは幸せでしたか?

半年前、私の父は死んだ。
ガンで死んだ。

ずっと前から、身体の具合が悪かった。それに気付かなかった。いや、ずっと訴えかけていたのに…気付いていたのに…皆、たいしたことないって…そう思ってた。

でも、違った。
全然、体調はすぐれなくて。それで、やっと病院に行ったんだ。


学校から家に帰ると母がいた。

――お父さん、ガンだって……

ただその一言。

ガン?ガンってなに?だって、元気だったじゃない。笑ってたじゃない。
そんな訳ない。ガンなんかじゃない。

そう、自分に言い聞かせていた。

…お父さん、治るよね?

私がそう言うと、母は泣いた。

3ヵ月。

それが、父の余命だった。

頭が真っ白になった。

父がいなくなる…

涙はでなかった。



入院生活はひどかった。
薬の副作用で、だんだん、弱くなっていく父。
そんな父を見るのが辛かった。

だんだん、正気を保てなくなっていく。

ねぇ……
お母さんの事分かる?

おばあちゃんは?お姉ちゃんは?お兄ちゃんは?
……私は?

嫌だよ。私の事見てよ。名前呼んでよ。お父さんがつけてくれたんでしょ?私の名前。


毎日のように、
ここは何処?って聞いてくるの。
ここは病院だよって。
いつもは、これだけで会話は終わっていたのに…


退院したい……


そう言った父は、泣きそうで。

私は初めて泣いた。


1番辛いのは父で。

私は何も出来なくて……





その数日後、父は死んだ。



ねぇ、お父さん。
お父さんは幸せだった?
お母さんと結婚して、お姉ちゃんとお兄ちゃんと私が産まれて。
私は幸せだったよ。お父さんとお母さんの娘で。


ねぇ、お父さん。
お父さんと過ごした日々が忘れられない。
だから、お父さんのメールは消さない。お父さんが生きてた証だから。


ねぇ、お父さん。
私、毎日空を見るよ。
お父さんが好きだった空を。


忘れないよ。


大好きだよ。お父さん。


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