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One step vol.5

[345]  佐々木リカ  2007-04-18投稿
フミと過ごした時間の中で忘れられない事が2つある。

1つは人生で初めてセックスした事。

もう1つは、初めてのホワイトデーだ。

どちらも私の心に深く残っている。

1つ目は付き合って3ヶ月くらいだったろうか。それまで彼が私の体を求めたり、言葉で誘う事は無かった。私は自分の体に自信があったわけでもなく、その行為そのものが無くても満足だったのだが、20歳を越えて未だに経験をしていないことに焦りを感じていたため、少し不安でもあった。

キスは何度もしているし、抱きしめられる事もしばしばあるのに、その先へ進めないもどかしさを私は感じていた。




それは帰り際での事だった。

「もっと一緒にいたい。リカに門限がなかったらいいな…。」

フミがそっと呟いた。私の頭の中はグルグルと回り出した。

「今度お泊まりしようよ」

こんな言葉を出したら引かれるんじゃないかとか。

「仕方ないよ…。今でも充分だよ。」

この言葉でまたフミと深く繋がるチャンスをダメにするのか。

私が出した答えは

「私も一緒にいたい。フミをもっと知りたい。」

この言葉が精一杯だった。

フミはやけに真面目な顔をして、一緒にもっと長く過ごせるよう、親を説得してくるようにと私に言った。

その何日か後に私たちは朝まで一緒に過ごした。
私は全身でフミの唇と体温、切ない吐息、甘い痛みを感じた。

なぜ人が交わろうとしたがるのかがこの日、わかった気がした。

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