虫の契約者は恋に焦がれて
私は暗闇の中で目を覚ました。これで何度目になるだろう。もう二、三度目ぐらいだろうか……どうにも寝つきが悪い。 きっと怖いんだ。戦に駆り出されることぐらい、入団したときから覚悟していたくせに……。悔しいけど、怖がっているんだ。死なせることに、死ぬことにも……私はどうしても……。
浅い夢の中で、私――獅子乃牡丹(ししの ぼたん)は戦場に身を置いていた。大きな夫の背の上に立ちながら、味方が敵を殺し、敵が味方を殺し、味方が味方同士を殺し合っている戦況を見つめていた。ただ見つめていたわけじゃない。機を見定めていたんだ。私は軍師だから。頭の中で何種類もの状況を想定し、その場で有効だと思われる計略をさらに何種類も想定していた。それなのに、夢の中の私はいつも機を見誤った。そして、そこでいつも目が覚めるのだ……。
一度目をまばたきをし、私はのそのそと上体を起こした。ぐっしょりと濡れた寝巻きは気持ち悪いが、外気に触れると少しばかり涼しくて気持ちがよかった。
「……でも、ちょと寒くなってきたな」
生暖かい布団の中から、上質の絹のような肌のすらりと長い足をさらした私は、ベッドからすっと立ち上がった。
浅い夢の中で、私――獅子乃牡丹(ししの ぼたん)は戦場に身を置いていた。大きな夫の背の上に立ちながら、味方が敵を殺し、敵が味方を殺し、味方が味方同士を殺し合っている戦況を見つめていた。ただ見つめていたわけじゃない。機を見定めていたんだ。私は軍師だから。頭の中で何種類もの状況を想定し、その場で有効だと思われる計略をさらに何種類も想定していた。それなのに、夢の中の私はいつも機を見誤った。そして、そこでいつも目が覚めるのだ……。
一度目をまばたきをし、私はのそのそと上体を起こした。ぐっしょりと濡れた寝巻きは気持ち悪いが、外気に触れると少しばかり涼しくて気持ちがよかった。
「……でも、ちょと寒くなってきたな」
生暖かい布団の中から、上質の絹のような肌のすらりと長い足をさらした私は、ベッドからすっと立ち上がった。
感想
- 6934: 続きを書いて下さい。 [2011-01-16]