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悲しみの空?

[361]  桐生徳人  2007-04-28投稿
「お前は、人の悲しみを吸い取る能力を持っている。この能力は人を救済出来る、素晴らしい能力だ。」

…僕は驚きもしなかった。

「でも、この能力は強すぎる…人悲しいという感情自体を吸い取ってしまう…母さんやその女の子のようにな。それに、お前にも少なからず反動があるようだし。」

僕は驚かない…でも僕の中で二人の悲しみが湧き上がって来るのがわかった。

「決して、安易に使うんじゃないぞ。悲しむことが出来ないのは…この上なく悲しいことだから…」

父さんの目にはうっすらと涙が滲んでいた。

「…イル、明日になったら家を出てどこか知らない所へ行こう。」

父さんの目つきが急に鋭くなった。

「どうして?」

「実は、政府が能力者調査と言って、近々この辺に来るらしいんだ。この辺はスラム街出身が多いからな…政府に捕まったら施設に送られて、何されるか分からん。だからその前に逃げるんだ。」

僕は急に恐ろしくなった。

「うん、わかった。」

「よし、じゃあ早く荷物をまとめるんだ。明日の朝一には出掛けるぞ。」

僕は急いで荷物をまとめようとした…その時だった。

ーコンコンー

玄関からノック音がした。

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