MURASAME
雪女?
子供の時のことだ。父親に連れられて故郷の山に登ったが、日が暮れるにつれ雪が降り出し、やがて吹雪となった。引き返そうにも、視界はゼロに近くなり、仕方なしに、雪明りを頼りに歩いていた。どこまで来た時だろうか、父親が20メートル程前に人の姿を見た。そして、
「向こうから人がくるが、けっして言葉を交わしてはいけない。顔もみるな。父から離れてはいけない」
といった。やがてその人はすぐ近くまでやって来たが、俺は恐々と袖の下から顔を見てしまった。それは着物姿の白い女で、女は俺をじっと見つめて、笑った。が、そのうち吹雪の中に消えていった。
故郷を離れて、5年になる。ほぼ勘当状態のまま家を飛び出した俺には近寄り難いものがあった。
そんな中、親父が死んだ。俺はとるものもとりあえず大急ぎで故郷へ向かい、列車に飛び乗った。
実に五年ぶりの帰郷だったが故郷は変わっていなかった。まるで、時間旅行者にでもなったような感覚がこそばゆくも奇妙に感じる。
葬儀の後、ふとあの吹雪の夜を思い出した。懐かしさもあったのだろうか、俺の足は山に向かっていた。最初はほんの少し歩くつもりだったが、まるであの日を再現するように雪が降り出し、強くなった。まずい…吹雪になる…そう感じた俺は近くにあった山小屋に転がりこみ、雪がやむのを待つことにした。
山小屋には先客がいた。高校生くらいの青年と、眼鏡をかけた若い男だった。恐らく、スキーでもするつもりで吹雪にあったのだろう。俺は暖炉のそばに腰を下ろし、暖をとった。すると、不意に眼鏡の男が話しかけて来た。
子供の時のことだ。父親に連れられて故郷の山に登ったが、日が暮れるにつれ雪が降り出し、やがて吹雪となった。引き返そうにも、視界はゼロに近くなり、仕方なしに、雪明りを頼りに歩いていた。どこまで来た時だろうか、父親が20メートル程前に人の姿を見た。そして、
「向こうから人がくるが、けっして言葉を交わしてはいけない。顔もみるな。父から離れてはいけない」
といった。やがてその人はすぐ近くまでやって来たが、俺は恐々と袖の下から顔を見てしまった。それは着物姿の白い女で、女は俺をじっと見つめて、笑った。が、そのうち吹雪の中に消えていった。
故郷を離れて、5年になる。ほぼ勘当状態のまま家を飛び出した俺には近寄り難いものがあった。
そんな中、親父が死んだ。俺はとるものもとりあえず大急ぎで故郷へ向かい、列車に飛び乗った。
実に五年ぶりの帰郷だったが故郷は変わっていなかった。まるで、時間旅行者にでもなったような感覚がこそばゆくも奇妙に感じる。
葬儀の後、ふとあの吹雪の夜を思い出した。懐かしさもあったのだろうか、俺の足は山に向かっていた。最初はほんの少し歩くつもりだったが、まるであの日を再現するように雪が降り出し、強くなった。まずい…吹雪になる…そう感じた俺は近くにあった山小屋に転がりこみ、雪がやむのを待つことにした。
山小屋には先客がいた。高校生くらいの青年と、眼鏡をかけた若い男だった。恐らく、スキーでもするつもりで吹雪にあったのだろう。俺は暖炉のそばに腰を下ろし、暖をとった。すると、不意に眼鏡の男が話しかけて来た。
感想
- 6962: 何だか いわくありげな雪女の話しになりそう… [2011-01-16]