暇の潰し方13
「ヒロ、大変よ!」
朝、教室に入ると高崎美玖が大声を上げた。
「あー、寝不足で頭が痛いんだ、怒鳴らないでくれ。」
夜中に昔の漫画を引っ張り出してしまったのだ。全巻揃ってしまっているだけに読み切ろうとしてしまうのが人の心理だろう。
「そんなこと言ってる場合じゃないんだってば!」
ミクは頭蓋によく響く透った声を出す。今日、身を以て実感した。
ミクに頭を掴まれ、ある方向に向けられる。ごき、という鈍い音は無視された。
「…な!?」
「わかった?」
眠気も覚めた。確かに、これは大変なことだ。
日下部佳奈理が、虚ろな瞳で黒板を見つめているのだった。
朝のHR後、俺はミクを引き連れ日下部の席に向かう。
あの、回遊魚の如く動き続ける日下部が大人しくしているものだから、教室中の人間も遠巻きにそちらを見ている。
その面々よりは付き合いの長い俺は、幾度かこの大人しい日下部を知っている。
こいつのこれは、正に嵐の前の静けさなのだ。ここまでの無心ぶりは初めて見るが。
だから俺は、ミク達とは違う恐怖を抱く。
黙っているのが不気味なわけじゃない。その後の、突飛な思い付きが怖いのだ。
今度は、何を思い付くのか。
「あー、と、日下部?」
無駄と知りつつ声を掛ける。この状態の日下部は無念無想。神のお告げを待つように暇潰しの方法を模索しているのだ。
「だ、大丈夫?カナちゃん?」
ミクが日下部の肩に手を乗せようとした瞬間。
「…!…だーっ!」
「わきゃあ!?」
日下部は両腕を天に突き出し、立ち上がった。満面の笑みで。
…俺にとっては、死の宣告だ。
今まで以上の虚脱ぶりからして、今まで以上の奇行を思い付いたに違いない。
反省文程度で済めばいいが。
「笠木くん!今日は久々に外に出ましょう!」
窓の外を見る。現在、日本全土は梅雨の時期で、俺達の住む地域も例外でない。これもまた、頭痛の原因の一つだろう。雨が降り続けている。
「…何をするつもりだ?」
日下部に視線を戻し、脱力気味に尋ねる。日下部の両目は、先程までと打って変わって爛々と光を放っている。
「そ、そうよ。こんな雨の日に外に出て何するの?」
腰を抜かしかけ、放心もしてたらしいミクが復活して日下部に尋ねる。かなり戸惑った様子で。
「それはですね…。」
日下部は両手を腰にやり、胸を張って口を開いた。
「続く!」
「あぁ!?」
朝、教室に入ると高崎美玖が大声を上げた。
「あー、寝不足で頭が痛いんだ、怒鳴らないでくれ。」
夜中に昔の漫画を引っ張り出してしまったのだ。全巻揃ってしまっているだけに読み切ろうとしてしまうのが人の心理だろう。
「そんなこと言ってる場合じゃないんだってば!」
ミクは頭蓋によく響く透った声を出す。今日、身を以て実感した。
ミクに頭を掴まれ、ある方向に向けられる。ごき、という鈍い音は無視された。
「…な!?」
「わかった?」
眠気も覚めた。確かに、これは大変なことだ。
日下部佳奈理が、虚ろな瞳で黒板を見つめているのだった。
朝のHR後、俺はミクを引き連れ日下部の席に向かう。
あの、回遊魚の如く動き続ける日下部が大人しくしているものだから、教室中の人間も遠巻きにそちらを見ている。
その面々よりは付き合いの長い俺は、幾度かこの大人しい日下部を知っている。
こいつのこれは、正に嵐の前の静けさなのだ。ここまでの無心ぶりは初めて見るが。
だから俺は、ミク達とは違う恐怖を抱く。
黙っているのが不気味なわけじゃない。その後の、突飛な思い付きが怖いのだ。
今度は、何を思い付くのか。
「あー、と、日下部?」
無駄と知りつつ声を掛ける。この状態の日下部は無念無想。神のお告げを待つように暇潰しの方法を模索しているのだ。
「だ、大丈夫?カナちゃん?」
ミクが日下部の肩に手を乗せようとした瞬間。
「…!…だーっ!」
「わきゃあ!?」
日下部は両腕を天に突き出し、立ち上がった。満面の笑みで。
…俺にとっては、死の宣告だ。
今まで以上の虚脱ぶりからして、今まで以上の奇行を思い付いたに違いない。
反省文程度で済めばいいが。
「笠木くん!今日は久々に外に出ましょう!」
窓の外を見る。現在、日本全土は梅雨の時期で、俺達の住む地域も例外でない。これもまた、頭痛の原因の一つだろう。雨が降り続けている。
「…何をするつもりだ?」
日下部に視線を戻し、脱力気味に尋ねる。日下部の両目は、先程までと打って変わって爛々と光を放っている。
「そ、そうよ。こんな雨の日に外に出て何するの?」
腰を抜かしかけ、放心もしてたらしいミクが復活して日下部に尋ねる。かなり戸惑った様子で。
「それはですね…。」
日下部は両手を腰にやり、胸を張って口を開いた。
「続く!」
「あぁ!?」
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