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暇の潰し方18

[245]  あこん  2007-05-03投稿
「…日下部。」
道路を渡ろうとする日下部佳奈理を呼び止める。
嫌な予感がする。
日下部は聞こえてないのか速度を緩めない。
「日下部!」
動悸が激しくなる。焦っている。
何故?
信号は青だ。何を焦る?
「く…。」
…どういう訳か、三度目を躊躇する。
彼女が、離れて行く。
消えてしまう。
目の端で、向かって来る大型トラックを捉えた。
消える、消える?
「…カナリ!」
自然と体が動いていた。
俺の手は彼女の腕を掴み、俺の口は彼女の姓ではなく名を呼んでいた。
振り返った彼女は目を見開いて俺を見ている。
右側に視線をやれば、トラックは停止線の手前で止まっている。
…何事も、ない?
とにかく横断歩道を渡り切って、俺はへなへなと腰を下ろし、脱力した。
「えー、と、笠木くん?」
「…なんだ?」
日下部がこちらを覗き込む。
「先程の行為は一体…?」
まさか日下部が理解出来ない行動を俺が取るとは。一本取った感じだ。
いや、そうではなく。
俺自身、なんであんな事をしたかわからない。ただ、なんとなくだ。
「いや、トラックが直進してくるように見えたから。」
とりあえず認識していることを言ってみる。
「普通に呼び掛ければいいじゃないですか。」
「なんとなくだ。」
「それに、笠木くん自分からトラックの前に出てどうするんですか。もし本当にそうだったら私の巻添えですよ?」
「ついだ、つい。」
俺にだって理解できん。
「…あと、なんで名前呼んだんです?」
疑わしげな目で日下部が俺を見る。
いつもと立場が逆でちょっと面白い。
「どうでもいいが、顔が近いぞ。」
「じゃぁ放してくださいよ。」
「え?」
…俺の手は、日下部の腕を掴んだままだった。
「…悪い。」
「いえ、いいですけど。」
お互い離れて、溜息を一つ。
「ま、いいです。助けようとしてくれてありがとうございます、ヒロトくん。」
「んぁ?」
違和感に気付いて顔を上げる。
カナリは和菓子店に向かっていた。
「では、遅れて店に入った方が奢るということで。」
「あ、おい!最初からお前が奢る約束だったろ!おい、カナリ!」
カナリは店に半身を入れた。
「ご馳走様ですヒロトくんー。」
騒がしいのは変わらないが、互いの呼称はいつの間にか変わっていた。
それだけが、変わっていた。

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