ナイト・オン・ドラグーン【98】話『黒き影の正体』
張り詰めた空気がただ重く、体にのしかかる。
−『本当に…本当にそう言い切れるのか?エリスは封印騎士団がやっていることすべて知っているのか!?』
逃亡を図った村人を処刑し、村への水を止め、或は星の光すらない闇の中での生活を強いる。
そんな実態を知っているのか。
訪れた村や町で聞く封印騎士団の評判は最悪だった。
騎士団員は蛇蝎の如く忌み嫌われていた。
何もかも、アインが騎士団を離れて初めて知ったことだった。
−『騎士団のやってることをすべて知ってて、それでも違うと言えるのか?真実から目を背けて、逃げてるだけじゃないのか』
−『わたくしが…逃げている?』
エリスの顔に狼狽の色が浮かぶ。
アインに向けていた槍の矛先が戸惑うように揺れる。
−『どけ!馬鹿者が!』
ジークがエリスを突き飛ばした。
−『反逆者の妄言に惑わされるとは!』
すでにジークは剣を抜いている。
−『余が直々に処刑してくれよう』
ジークが叩きつけてくる剣をアインは受け止める。
金属音。
その瞬間、気付く。ジークの右腕が戻っていることに。
あのとき、確かにアインはジークの腕を斬り落としたはずだ。あれは何だったのか。
闇の色をした剣がアイン目掛け落ちてくる。
辛うじて受ける。
受けてみればたいした重さじゃない。
…獄炎の守護者炎帝スウェン、神水の守護者、狂士ギース彼らが打ち込んできた重さはこんなものじゃなかった。
そう、確実に自分は強くなっている。
−『おまえの思い通りになんかさせない!』
ジークの剣を弾き返す。
剣を握る手が揺らいだところを斬り上げる。
妙な手応えを感じたが、構わず斜に斬り下ろす。
やはり妙な手応えがある。
渾身の力で横に斬る。
明らかに肉を斬ったときとは違う感触とともに、ジークの鎧が大きく裂ける。剣が落ちる。
−『お、おのれ…』
さらに一撃。裂けた鎧が吹っ飛んだ。
鎧だけではない。
ジークが身につけていたものすべてが、がらがら音をたてて床に転がり落ちた。
エリスが小さな悲鳴を上げる。
そこに生身の体はなかった。
影を集めたような黒い体。
手も足も顔さえもが、ジークは闇の色をしていた。
−『本当に…本当にそう言い切れるのか?エリスは封印騎士団がやっていることすべて知っているのか!?』
逃亡を図った村人を処刑し、村への水を止め、或は星の光すらない闇の中での生活を強いる。
そんな実態を知っているのか。
訪れた村や町で聞く封印騎士団の評判は最悪だった。
騎士団員は蛇蝎の如く忌み嫌われていた。
何もかも、アインが騎士団を離れて初めて知ったことだった。
−『騎士団のやってることをすべて知ってて、それでも違うと言えるのか?真実から目を背けて、逃げてるだけじゃないのか』
−『わたくしが…逃げている?』
エリスの顔に狼狽の色が浮かぶ。
アインに向けていた槍の矛先が戸惑うように揺れる。
−『どけ!馬鹿者が!』
ジークがエリスを突き飛ばした。
−『反逆者の妄言に惑わされるとは!』
すでにジークは剣を抜いている。
−『余が直々に処刑してくれよう』
ジークが叩きつけてくる剣をアインは受け止める。
金属音。
その瞬間、気付く。ジークの右腕が戻っていることに。
あのとき、確かにアインはジークの腕を斬り落としたはずだ。あれは何だったのか。
闇の色をした剣がアイン目掛け落ちてくる。
辛うじて受ける。
受けてみればたいした重さじゃない。
…獄炎の守護者炎帝スウェン、神水の守護者、狂士ギース彼らが打ち込んできた重さはこんなものじゃなかった。
そう、確実に自分は強くなっている。
−『おまえの思い通りになんかさせない!』
ジークの剣を弾き返す。
剣を握る手が揺らいだところを斬り上げる。
妙な手応えを感じたが、構わず斜に斬り下ろす。
やはり妙な手応えがある。
渾身の力で横に斬る。
明らかに肉を斬ったときとは違う感触とともに、ジークの鎧が大きく裂ける。剣が落ちる。
−『お、おのれ…』
さらに一撃。裂けた鎧が吹っ飛んだ。
鎧だけではない。
ジークが身につけていたものすべてが、がらがら音をたてて床に転がり落ちた。
エリスが小さな悲鳴を上げる。
そこに生身の体はなかった。
影を集めたような黒い体。
手も足も顔さえもが、ジークは闇の色をしていた。
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