居眠り姫の起こし方
夕日射す放課後の教室。
何もかもが朱く染まっている。壁も、天井も、机も。人でさえ。
窓際の机に伏して眠り込む少女は、まるで作り物のようにそこにある。
朱い世界の眠り姫。
要約すると、下校時刻まで眠り続ける娘。
「…他にやる事はないのか、お前は。」
鋭い目で、眠り姫を見下ろす男が一人。
朱の中でも黒を主張するその目は、斜視に三白眼を合わせ持つ、凶悪な造りをしている。
特に音を立てないようにでも無く、少女の机の側に寄る。
「全く、毎日毎日。」
少女を起こさんと、男は机に両手をつく。
眠り姫は、王子のキスによって目を覚ます。そう昔から決まっている。
だが、少女はどこかの国のお姫様ではないし、男もまた王子ではない。
だから、起こす手段がキスなわけがあるはずがない。
「ふん!」
男が少女の机を勢いよく前方に引っ張る。すると、支えを無くした少女はそのまま前に倒れ込んだ。
「いたいっ!?」
床に額を打ち付けた少女は、座り込んだまま涙目で男を見上げる。
「…もうちょっと優しく起こせないの?」
口をへの字にして不機嫌そうに少女は言う。「当社比三倍の優しさで起こしてる。」
「当社、てどこよ。」
「無論、我が家だ。」
兎も角、少女は立ち上がり男とともに教室を後にした。
王子ではない男の名は和真(かずま)。
お姫様ではない少女の名は由良(ゆら)。
どこにでもいる、只の高校2年生である。
「なぁ?」
学校から出た辺りで和真が口を開く。
「なにー?」
起き抜けの気怠さもそのままに、由良が聞き返す。
「寝てばっかじゃなくてよ、遊んだり、しないワケ?」
由良は半眼で和真を睨み、嘆息して繋げる。
「しないよ、これが趣味みたいなものだもの。」
「そんな一日中寝てなくったって。」
「寝た気がしないの、浅い眠りばっかりで…て、最初の頃にも同じ事話した気がするわよ?」
今度は呆れを含んだ視線を和真に送る。
「そうだけどよ、それでもやっぱり寝過ぎじゃないかな、と。」
「一日の大半を寝て過ごす生き物がいるくらいだもの、いいじゃない。」
由良は腕を高く挙げ、体を伸ばす。
「必要な時は起きてるもの、文句ないでしょ。」
「俺が起こしてるんだけどな、この一ヵ月半。その手間賃くらい文句聞けよ。」
「自分で起きろって言われたって無理よーん。」
眠り姫ならぬ居眠り姫は、和真に微笑んだ。
何もかもが朱く染まっている。壁も、天井も、机も。人でさえ。
窓際の机に伏して眠り込む少女は、まるで作り物のようにそこにある。
朱い世界の眠り姫。
要約すると、下校時刻まで眠り続ける娘。
「…他にやる事はないのか、お前は。」
鋭い目で、眠り姫を見下ろす男が一人。
朱の中でも黒を主張するその目は、斜視に三白眼を合わせ持つ、凶悪な造りをしている。
特に音を立てないようにでも無く、少女の机の側に寄る。
「全く、毎日毎日。」
少女を起こさんと、男は机に両手をつく。
眠り姫は、王子のキスによって目を覚ます。そう昔から決まっている。
だが、少女はどこかの国のお姫様ではないし、男もまた王子ではない。
だから、起こす手段がキスなわけがあるはずがない。
「ふん!」
男が少女の机を勢いよく前方に引っ張る。すると、支えを無くした少女はそのまま前に倒れ込んだ。
「いたいっ!?」
床に額を打ち付けた少女は、座り込んだまま涙目で男を見上げる。
「…もうちょっと優しく起こせないの?」
口をへの字にして不機嫌そうに少女は言う。「当社比三倍の優しさで起こしてる。」
「当社、てどこよ。」
「無論、我が家だ。」
兎も角、少女は立ち上がり男とともに教室を後にした。
王子ではない男の名は和真(かずま)。
お姫様ではない少女の名は由良(ゆら)。
どこにでもいる、只の高校2年生である。
「なぁ?」
学校から出た辺りで和真が口を開く。
「なにー?」
起き抜けの気怠さもそのままに、由良が聞き返す。
「寝てばっかじゃなくてよ、遊んだり、しないワケ?」
由良は半眼で和真を睨み、嘆息して繋げる。
「しないよ、これが趣味みたいなものだもの。」
「そんな一日中寝てなくったって。」
「寝た気がしないの、浅い眠りばっかりで…て、最初の頃にも同じ事話した気がするわよ?」
今度は呆れを含んだ視線を和真に送る。
「そうだけどよ、それでもやっぱり寝過ぎじゃないかな、と。」
「一日の大半を寝て過ごす生き物がいるくらいだもの、いいじゃない。」
由良は腕を高く挙げ、体を伸ばす。
「必要な時は起きてるもの、文句ないでしょ。」
「俺が起こしてるんだけどな、この一ヵ月半。その手間賃くらい文句聞けよ。」
「自分で起きろって言われたって無理よーん。」
眠り姫ならぬ居眠り姫は、和真に微笑んだ。
感想
- 7028: つまらん(・_・)エッ......? [2011-01-16]
- 7041: 作者 あぁ、またもや改行ミスが(笑)感想書いていただけるという事は一度は読んでくださったと判断します。ありがとうございます。勢いで書いてる作品ではありますが、長い目で見てくださると幸いです。 [2011-01-16]