MURASAME
邪龍?
荒く、強い波が押し寄せてくる。まるで海が悲鳴をあげているようだった。まだ昼間だというのに辺りは黄昏時のように昏く燃えていた。
降魔が刻…まさにそう呼ぶにふさわしい暗黒だった。
砂浜に巫女装束の姿をした美優がいた。普段見せないような清廉とした表情で波の向こうを見つめていた。後ろには天馬が待機し、邪龍を待ち続けた。
少しばかり経った頃だろうか、急に海が荒れ、波は更に高くなった。そして、不快な唸りと共に邪龍の巨大な体躯が姿を現した。
「きたか…」
天馬は呟くと美優を見た。彼女の顔に緊張が表れている。
邪龍は美優に向かってまっすぐに進んだ。唸り狂う七本の首が彼女を見据えた。美優は一呼吸つくと邪龍を前に舞い始めた。手に持った扇を開き、振るう。その動作の一つ一つが流れるように美しい。まるで、美優にのみこの世の光が集まったようだった。
「龍現の名において、国津の王に滅ぼされしけがれを祓わん…」
美優が真言を唱え、さらに舞を進めた。彼女の背後から光が上がり、やがてそれは龍の形を作っていった。
「龍魂現召!」
美優の叫びとともに龍は飛び立ち、邪龍に絡みついた。邪龍は不気味な唸り声を上げると七つの頭を振るい必死に抵抗した。
だが龍はその反撃にものともせず、やがて邪龍とともにその体を天に浮かべた。光が二匹を覆うように射し込み、邪龍の体が崩壊し始めた。やがて、その巨体全てが光となり、龍に見送られるように天へ昇っていった。
邪龍の魂が天に昇ると海は治まり、辺りは光で満ちた。
「美優ちゃん!」
天馬が駆け寄ると美優はへなへなと天馬の腕に倒れた。
「えへへ…緊張解けたらクラッときちゃった…」
「頑張ったね。」
天馬の言葉を聞くと美優は嬉しそうに笑った。
「疲れちゃった…もう少し、このままでいいよね…?」
二人の頭上に青空が輝いていた。
邪龍 終
荒く、強い波が押し寄せてくる。まるで海が悲鳴をあげているようだった。まだ昼間だというのに辺りは黄昏時のように昏く燃えていた。
降魔が刻…まさにそう呼ぶにふさわしい暗黒だった。
砂浜に巫女装束の姿をした美優がいた。普段見せないような清廉とした表情で波の向こうを見つめていた。後ろには天馬が待機し、邪龍を待ち続けた。
少しばかり経った頃だろうか、急に海が荒れ、波は更に高くなった。そして、不快な唸りと共に邪龍の巨大な体躯が姿を現した。
「きたか…」
天馬は呟くと美優を見た。彼女の顔に緊張が表れている。
邪龍は美優に向かってまっすぐに進んだ。唸り狂う七本の首が彼女を見据えた。美優は一呼吸つくと邪龍を前に舞い始めた。手に持った扇を開き、振るう。その動作の一つ一つが流れるように美しい。まるで、美優にのみこの世の光が集まったようだった。
「龍現の名において、国津の王に滅ぼされしけがれを祓わん…」
美優が真言を唱え、さらに舞を進めた。彼女の背後から光が上がり、やがてそれは龍の形を作っていった。
「龍魂現召!」
美優の叫びとともに龍は飛び立ち、邪龍に絡みついた。邪龍は不気味な唸り声を上げると七つの頭を振るい必死に抵抗した。
だが龍はその反撃にものともせず、やがて邪龍とともにその体を天に浮かべた。光が二匹を覆うように射し込み、邪龍の体が崩壊し始めた。やがて、その巨体全てが光となり、龍に見送られるように天へ昇っていった。
邪龍の魂が天に昇ると海は治まり、辺りは光で満ちた。
「美優ちゃん!」
天馬が駆け寄ると美優はへなへなと天馬の腕に倒れた。
「えへへ…緊張解けたらクラッときちゃった…」
「頑張ったね。」
天馬の言葉を聞くと美優は嬉しそうに笑った。
「疲れちゃった…もう少し、このままでいいよね…?」
二人の頭上に青空が輝いていた。
邪龍 終
感想
- 7070: 面白かったけど 龍と邪龍の闘いをもう少し長く見せて欲しかった… [2011-01-16]