靴ひも 3
「もう…遅いぞ!」と、彼女は腰に手を当てて唇を尖らせた。
「お誕生日、おめでとう」と、俺は息継ぎをしながら言った。
目を丸くする彼女。
背を向けて、「遅刻して、そんなこと言われてもね」と言った。
「ごめん。バスが渋滞に捕まっちゃってさ…。」と、俺は俯いて言った。本当は寝過ごしたんだけど。
「走ってきたんだね。」と、彼女は背を向けたまま、言った。
「うん。早く会いたかったから。遅刻しちゃうのは、確実だったけど…。」 と、俺は顔を上げると、彼女が振り向いた。
「靴ひも、解けてるよ。」と、彼女は靴を指差して言った。
俺は、下を向いて「あッ」と言って、急いで屈み、靴ひもを結んだ。
必死で結んでる俺がおかしかったのか、彼女のクスッという笑い声が聞こえた。
見上げたそこには、笑顔があった。俺が見たかった、満面の笑み。
彼女にしかできない。俺だけに与えられた特権。
「結ぶのを忘れるくらい必死だったのは、認めて上げる」と、言って彼女はまた笑った。
俺も自然と笑みがこぼれた。
彼女色に染まっているのを感じた。
彼女が居て、俺がいる。
ただそれだけで、いい。
そう思えた日だった。
「お誕生日、おめでとう」と、俺は息継ぎをしながら言った。
目を丸くする彼女。
背を向けて、「遅刻して、そんなこと言われてもね」と言った。
「ごめん。バスが渋滞に捕まっちゃってさ…。」と、俺は俯いて言った。本当は寝過ごしたんだけど。
「走ってきたんだね。」と、彼女は背を向けたまま、言った。
「うん。早く会いたかったから。遅刻しちゃうのは、確実だったけど…。」 と、俺は顔を上げると、彼女が振り向いた。
「靴ひも、解けてるよ。」と、彼女は靴を指差して言った。
俺は、下を向いて「あッ」と言って、急いで屈み、靴ひもを結んだ。
必死で結んでる俺がおかしかったのか、彼女のクスッという笑い声が聞こえた。
見上げたそこには、笑顔があった。俺が見たかった、満面の笑み。
彼女にしかできない。俺だけに与えられた特権。
「結ぶのを忘れるくらい必死だったのは、認めて上げる」と、言って彼女はまた笑った。
俺も自然と笑みがこぼれた。
彼女色に染まっているのを感じた。
彼女が居て、俺がいる。
ただそれだけで、いい。
そう思えた日だった。
感想
- 7071: 展開が上手い!久しぶりノンストップ小説を読んだ気がする。 [2011-01-16]