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居眠り姫の起こし方8

[258]  あこん  2007-05-14投稿
「…暑いわね。」
昼休み、何度目かのその台詞を和真は聞き流す。
「本っ当にあっつい。」
由良は整った顔を可能な限り歪めて窓の外に広がる雲一つない空を睨む。
和真は只無言で月刊雑誌を読む。
「…和真、そんな目で猫の本読まないでよ。」
どんな目かと言えば、必要以上に吊り上がった目。更に目自体が小さくなく、正面を向けば自然と三白眼になってしまう。
和真自身も最近気がついた事だが、眉間にも無駄に力が入っているらしく縦に皺までよっていた。
「どんな目で読めと言うんだ。」
自分の事を言われたこともあり、和真は返事を返す。
「こう…ふにゃ、というかほわ、っていうか?」
目元に指を当ててぐにぐにさせているかと思えば、由良は机に倒れ込む。
「ダメだ、気紛れない。」
常なら、由良は昼休みはさっさと食事を済ませて昼寝を始める。
しかし、今日は暑すぎた。夏を目前に控え、今年度一番の熱気だとかなんとか。
「適度な湿気と…程よい気温…。」
由良がうわ言のように呟きだしたのを聞いて、和真も流石にまずいと思い始めていた。
「カーテンでも架けるか?」
「ううーん、風通らなくなるからいやー。」
仕方なく和真は雑誌を閉じて、それで扇いでやる。
「…生温い。」
「文句か?それは文句だな?俺が暑いのも我慢して扇いでやってるのに文句を言うんだな?」
言う間も和真は手を止めない。
「…こんな日にこそあれよ、学校中水浸しにしなさいよ。」
「あぁ、あれか。」
二か月ちょっと前、二人の通う高校の廊下全てが水浸しになる珍事件があった。ちなみに二人は並んで同時に滑って転んだ。
「あぁ、向こうの男子が冷たい炭酸なんか持って来てる。」
由良は幾らか虚ろになった目で教室内を見渡す。
「あぁ、パシらされた子がアイス持ってやってきた。」
「…大丈夫か、由良?」
和真の目には、正直大丈夫には映っていない。
「暑くて寝れない…寝れなくて暑い…。」
「後者は成立するのか?」
「あ、ヒマラヤ製のかき氷が。」
「…幻覚か?」
和真が由良の顔を覗き込むと、既に両目を閉じて寝息を立てていた。
和真は立上がった。
(起きたらなんか欲しがるだろ、汗もかきそうだし。)
カーテンで、由良に直接日が当たらないようにして、飲物の自販機がある購買へ向かった。

感想

  • 7082: 毎回楽しみに読ませて頂いています。この作品は日常的に有りそうで無い、一種のほのぼのストーリーのような気がします。だからこそ楽しめるのかもしれません。次回も楽しみにしています。 [2011-01-16]
  • 7093: 作者 7082さん、ありがとうございます。えーと、その通りです(笑)。 まぁそれは冗談として、楽しんでくれているとのことでとても嬉しく思います。これからもぜひ宜しくお願いします。 [2011-01-16]

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