居眠り姫の起こし方9
「オレンジジュースとは気が利くわね。」
十五分程で由良は起きた。やはり暑くて寝苦しいらしい。
「しっかしいいタイミングよね。あたしが起きた位で和真帰って来たもんね。」
果汁でかなり機嫌の良くなっている由良がいつも以上によく喋る。しかし和真は押し黙っていた。
「…どしたの、むっつりしちゃって。」
普段なら何かと反応を返す和真が、一切言葉を発さず烏龍茶を飲んでいることを由良は不審に思う。
和真は何やら遠い目でどこまでも青い、この熱気の原因ではないかとさえ疑う澄んだ空を見ている。
「あぁ、和真もこの青い空に腹を立ててるのね?そんなに睨み付けちゃって。」
「…この目は生まれつきだ。」
和真が長年の癖で、反射的に応える。
「で、どうしたのよ?」
「…。」
「てい。」
掛け声とともに、由良は空になったアルミ缶の底で和真の額を叩く。
「…いてぇよ。」
「反応悪すぎよさっきから。」
和真は、困ったように由良を睨み…見つめる。
「…悪いけどあんたのアイコンタクトは殺気しか伝わらない。」
「出すかそんなサイン。」
和真は額に手の平を付けて大きく溜息をついた。
「…白木と、話した。」
「へー…へぇえ!?」
和真が淡々と話すので由良も反応が遅れた。
つまり、和真が、惚れている白木と話した、ということである。
更に付け加えるならば、和真はこれまで彼女と話したことは無いし、あちらも和真の事は一切知らないと言っていい。
例外としては和真と由良の恋人疑惑の噂位だろう。
「…で、どういうわけよ?」
和真の恋愛相談役になりつつある由良は、責任半分興味半分で問いただす。
「自販機の前で悩んでたわけだ。お前に買ってく飲物を。」
多少落ち着いた和真がぽつぽつと話す。
「すると、近くにいたんだな。『暑いね、何か飲むの?』とごく普通に話しかけてくれたんだ。」
「それでそれで?」
由良、すっかり恋愛話を楽しむ女子である。
「由良が起きたら何を飲みたいか、ってな話をしたら、『私は起きたらこんなの飲みたいかも』とそれを指差したわけだ。」
今は由良の机の上にある缶を指差す。
和真が由良の目覚時計であることは周知の事である。それが噂の原因だが。
「おっと、あたし何気にキューピッド?」
「貴女様のおかげです。」
和真は頭を机につけるように下げた。
十五分程で由良は起きた。やはり暑くて寝苦しいらしい。
「しっかしいいタイミングよね。あたしが起きた位で和真帰って来たもんね。」
果汁でかなり機嫌の良くなっている由良がいつも以上によく喋る。しかし和真は押し黙っていた。
「…どしたの、むっつりしちゃって。」
普段なら何かと反応を返す和真が、一切言葉を発さず烏龍茶を飲んでいることを由良は不審に思う。
和真は何やら遠い目でどこまでも青い、この熱気の原因ではないかとさえ疑う澄んだ空を見ている。
「あぁ、和真もこの青い空に腹を立ててるのね?そんなに睨み付けちゃって。」
「…この目は生まれつきだ。」
和真が長年の癖で、反射的に応える。
「で、どうしたのよ?」
「…。」
「てい。」
掛け声とともに、由良は空になったアルミ缶の底で和真の額を叩く。
「…いてぇよ。」
「反応悪すぎよさっきから。」
和真は、困ったように由良を睨み…見つめる。
「…悪いけどあんたのアイコンタクトは殺気しか伝わらない。」
「出すかそんなサイン。」
和真は額に手の平を付けて大きく溜息をついた。
「…白木と、話した。」
「へー…へぇえ!?」
和真が淡々と話すので由良も反応が遅れた。
つまり、和真が、惚れている白木と話した、ということである。
更に付け加えるならば、和真はこれまで彼女と話したことは無いし、あちらも和真の事は一切知らないと言っていい。
例外としては和真と由良の恋人疑惑の噂位だろう。
「…で、どういうわけよ?」
和真の恋愛相談役になりつつある由良は、責任半分興味半分で問いただす。
「自販機の前で悩んでたわけだ。お前に買ってく飲物を。」
多少落ち着いた和真がぽつぽつと話す。
「すると、近くにいたんだな。『暑いね、何か飲むの?』とごく普通に話しかけてくれたんだ。」
「それでそれで?」
由良、すっかり恋愛話を楽しむ女子である。
「由良が起きたら何を飲みたいか、ってな話をしたら、『私は起きたらこんなの飲みたいかも』とそれを指差したわけだ。」
今は由良の机の上にある缶を指差す。
和真が由良の目覚時計であることは周知の事である。それが噂の原因だが。
「おっと、あたし何気にキューピッド?」
「貴女様のおかげです。」
和真は頭を机につけるように下げた。
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