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航宙機動部隊第二章・26

[474]  まっかつ  2007-05-14投稿
『そう悲観的になりなさんな。とにもかくにも一先ず波は収まったのは事実ですぞ』
リーダーと言うのは時に無情な役目だ。
自分でも信じてもいない見通しを従う者達に説いて回らなければならないのだから。
最外縁征討軍総旗艦《D=カーネギー》内に提供されたロココ式の公邸にて、パレオス星邦議長兼元首代行ペアリーノ=グイッチャルディーニ氏は、一連の事態に動揺を隠せない中央政府当局が弱気に満ちた愚痴を上げて来るのを、少なく共見た目は気丈にも叱咤し続けていた。
『議長殿…真に遺憾な話ではありますが、これ以上星民を宥める自信は正直ございません』
それにも関わらず、執務机の上に浮かんだ実寸大四分の一程の似姿の示す不安は中々頑固な様子だった。
『確かに表面上は沈静化しました。ですが火種はまだ燻っています。何よりも今、この瞬間に置いても、燃料自体は無くなる所かその水位を増している筈なのです』
立体ホロ通信を介してジョゼッペ=ヴェリーニ首席政務官は、座れる議長に切々とした心情を緑かかった光と共に浴びせた。
『閣下…せめて太子党の身柄をこちらに預ける事は出来ますまいか』
さもないと本当にパンクするぞと言わんばかりの必死の訴えが、それには込められていた。
しかしグイッチャルディーニ氏は頭を振り、
『君だって知ってるだろう…中央域の仕来たりを。我々よりも遥かなる大国でもこれだけは手が出せないんだ』
苦渋に満ちた表情でそう説明するしかなかった。
だがそれは、より深刻気なしかめ面を招く結果を招くだけだった。
『現在ローカル・ネッツは管制に協力的ですが、これ以上彼等を抑え付けるのは限界です。不満も高まりましょうし、何よりこれでは四星紀に及ぶ我が国の民主制に禍根を残す事になりはしないかと心配なのです』
首席政務官の言いたい事は分かる。
幾ら非常時とは言えこのまま報道を制限すれば、星民生活の統制・監視に繋がる恐れが高まり兼ねないからだ。
これでは仮に勝っても、パレオスの理念・伝統は変質を来たし、最悪独裁や全体主義へと移行する危険性は充分に有る。
勿論この位、議長に取っては今更指摘されるまでもない。
だが、
『とにかく、今が踏ん張り所なのだ』
そう、押し通す以外の手は見付かりそうもなかった。
『四時間後には私も一端降りる。大切な客人を伴ってな』

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