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航宙機動部隊第二章・28

[467]  まっかつ  2007-05-16投稿
『…ですが、彼等はまだ若いのです。ただ未熟だと言うだけで、我々年長者がその矯正を怠り、ただ威を以て脅し法を以て刑す…本当にそれだけで宜しいのでしょうか?』
公爵の述べた歯切れの悪過ぎる弁護は、およそ整合性とは無縁な物だった。
しかし、職業柄、超然とは成り切れない相手の表情の中に何が潜んでいるのか、グイッチャルディーニ氏がその本意を見抜くのに苦労は無かった。
『閣下、貴方までそんな…!』
綺麗に苅り揃えられた芝生を踏みしめながら両手を広げ、議長はオーバーに困惑を示して見せた。
『何だってそうまでして彼等を庇うのです。確かに身内は可愛いでありましょうな。私だってそうです。ですが、同時に嘘はいけませんぞ?どう考えたって貴方が何も知らない分けが無い!また、そんな事がもしも有ったら連合艦隊自体が組織として実体を成してない事になる。これはこれでより致命的で有りましょう?一体何が閣下を正義の在りかから遠ざけているのです?貴方が彼等をそこまで憚る理由でもあるのでしょうか?』
すると、名状し難い動揺に満ちた目が、発言者を凝視し、それはいかにも申し分け無さそうにすぐ柱廊の上の方へと外らされた。
そして、
『…済まない』
ただそれだけを言って、司令長官はうつ向いてしまった。
その様子から、議長はこれ以上の追及は今は無理と判断せざるを得なかった。
『閣下、彼等の反省を促し、道徳心を涵養すれば解決するのならば、幾らでもそうするのが宜しいでしょう―ですが、今回の事態の良し悪しを縁故や年齢が審判を下す物でも有りますまい―私はもうおいとませねば成りませんが、是非とも閣下のお人柄を裏切らない判断が下される事を切に望んでおりますぞ』
そう釘を刺し、一礼してからグイッチャルディーニ氏はその場を後にした。
そして公爵が太子党に何か決定的な弱味を握られている事を、彼は確信した。
夕刻に差し掛かり、それを反映してオレンジ味の濃度を増しつつある人工ソーラの光に包まれながら、ネカイア公は半ば悄然とそれを見送るしか出来なかった。

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