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MURASAME

[494]  あいじ  2007-05-19投稿
鬼門?


暗く、よどんだ空気が辺りに流れた。
暗黒に包まれたその空間は邪悪さと共に一種の美しさを表していた。
突然、暗闇の中心が昏く光った。気が付くとそこには、影が立っていた。
影は暗黒に照らされ嘲った。


本部に着くと、既に蔵王丸と咲子が待っていた。
「すいません。お待たせしました」
幸司と天馬はソファーに腰掛け、二人を見つめた。
「いや…いいよ。約束の時間通りだ」
蔵王丸はいつになく真面目な顔で二人に言った。普段から神経質そうな顔だが今日はさらにそう見えた。
「さて、本題にはいろう。君達は鬼門というものを知っているかい?」
二人は素直に首を振った。蔵王丸は頷くと説明を始めた。
「鬼門はこの世界と妖の世界を結ぶ巨大な界のことだ。かつて、その巨大さ故か日本中の呪術師、陰陽師を集め、封印された」
蔵王丸が言葉を切った。幸司と天馬は黙って説明を聞いていた。
「もし、この鬼門が開いたら、大量の妖達がこちらの世界に溢れ、とんでもない事になるだろう」
「でも、封印されているんですよね?だったら…」
幸司の言葉に蔵王丸は頷いた。
「勿論、封印はされている…だが二日後、百年に一度の鬼門開帳の日を迎えると封印は解除されるため、新たに封印しなければならない」
蔵王丸の言葉に幸司と天馬の表情が固くなった。
「君達は今から鬼門のある鬼部村へ行ってもらう。二日後に控えた、鬼門調伏の儀の護衛についてもらう」
幸司と天馬が頷くのを見て、蔵王丸も頷いた。
「…今回は僕もついていこう。何かと心配だからね」
「それと」と言って蔵王丸は幸司を指差した。
「幸司君にはもう一つ頼みたいことがあるから…」
「俺に頼み?」
怪訝な顔をする幸司を蔵王丸が笑顔で制した。
「向こうにつけば分かるよ」
こうして、三人は一路、鬼部村を目指すことになった。

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