携帯小説!(PC版)

穴-?

[632]  ユメカシカ  2007-05-21投稿
それは唐突に起きた。
普段なら気にしなかったであろうその穴をよりによって今日に限って覗いてしまったののである。
ワサワサと這い出る小さな虫を恐怖を含んだ眼で見つめる。
カサカサカサカサ……
虫たちは止まることを知らない。
あっという間に壁はビッシリと虫の甲殻で真っ黒に覆われ、これが虫だと知らずに遠くから見たら室内灯に反射した光がキレイだろうなと呑気に思いつつ、それでもやはり恐怖を含んだ眼は変わらない彼を気にすることなく這い出る虫は全くもって気味が悪い。
………………
彼の悲鳴のようなものが収まったことで部屋に沈黙が訪れた。
いや、虫の這い回るカサカサという音がより鮮明に聞こえるようになっただけだった。
最早、視界は全て黒光りする虫に覆われていた。
だがこれで終わるはずもなく、壁の穴からは次々と新しい虫が飛び出す。
窓に何かが当たる音が聞こえる。
彼は虫を手で叩き落とし窓を見た。
そこには一人の男、と言うべきか、奇妙な恰好をした生き物が立っていた。男は彼に向かって微笑みかけると「やぁ、元気?」と訪ねた。
男の歯は数本抜け落ちており、着色汚れがヒドい。
彼も思わず「まあまあかな。でも虫は少し鬱陶しいよ」と返した。
それに男は「そうかい」と返すとそれっきり姿を見せることはなかった。
さてどうしようか、彼はそう呟くと最早床すらも虫に占領された室内に座りこんだ。
尻の下で一瞬堅い感触を感じたが、すぐにそれはなくなり変わりにプチッという何かがはじける音がした。
さて、彼は悩む。
こうしている間にも虫は穴から沸き続け部屋を埋め尽くしていく。
全くしようがない、彼はそう呟き虫の海に寝ころんだ。
黒い小さな虫が彼の体を覆っていく。
虫が彼の目に入り、鼻に入り、口に入り、耳に入り。
彼は真っ黒な世界に呑み込まれていった。
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

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