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恋愛譚2

[209]  皐月花  2007-05-21投稿
なんとなく村山が気になりながら、しかし話しかける用立てもなく、半年ほどが過ぎた。クリスマスを控えた十二月、私は高校の頃好きだった同級生にふと電話をかけ、二時間ほどの電話で時間が巻き戻されたように、彼に恋をした。厳密に言えばそれは恋ではなく、ただ時間だけが巻き戻ったのだと今ならわかる。金沢に住むという彼に会うため、クリスマスプレゼントを携え、白い景色の中を突き進む列車に揺られた。駅まで車で迎えに来た彼。車にはスヌーピーのぬいぐるみがぶら下げてあった。「彼女の?」さりげないふりをして聞く私に彼は戸惑いながら答えた。「最近別れたけどね」「はずしちゃいなよ!」私の胸はじりりと軋んだ音をたてる。「いいんだよ。触るな」まだ血の滴る傷口を覗き見た気がして、私は言葉を失い、代わりに曖昧な笑顔を返した。兼六園に金沢城、そして市場と一通り金沢の名所を巡ると、彼は日も落ちた砂浜に車を止めた。荒れ狂う日本海の波に飲み込まれそうなスリルに二人してはしゃぎながら、私は「この逆巻く風の中、どうして彼はウソでも私を抱きしめてくれないのか」と切なくなった。車に戻って、私が手渡したクリスマスプレゼントのマフラーを首に巻きながら「ありがとう」という言葉とは裏腹な彼の困った笑顔が、また私の胸を締め付けた。
夕食を食べながら私はこれ以上飲めないというほど飲んだ。卑怯な思惑だが、正体のなくなった私をホテルの部屋まで送り届けた彼が寂しさからでも、私を抱いてくれればいいと思った。そんな私の胸の内を見透かすように彼はあくまで紳士的に私をホテルに送り届け、「明日の朝迎えにくるから」と去って行った。私は自分の思惑の下品さに打ちのめされ、翌日逃げるように金沢を去った。

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