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航宙機動部隊第二章・35

[426]  まっかつ  2007-05-25投稿
『この知らせをチャンネル77やエンタ・ヴィジョンズにくれてやってもどの道一緒だろう?連中はへこへこ頭を下げて僕に感謝し、そして君の馬鹿さ加減を笑うだけさ!そして、本局筋は君の人道的配慮とやらに感涙してさぞかし人道的な処置で報いてくれるだろうよ!それでも良いならリンゼイやシュルヒ辺りを使うから良いよ。同じ馬鹿でも奴等の方が余計な事はごちゃごちゃ言わないだろうからな!』
いきりたつままに、そうぶちまけてソファーを立ち上がろうとするフーバー=エンジェルミは、しかし内心で勝利を確信した。
視界の辺縁に映る相手が表情に示したのは、明らかに哀願だったからだ。
『お…お待ち下さい…』
ライバル達の名と己の立場の危うさをほのめかされ、あっけなく窮地に追い詰められたA=キネは、声を情けなく震わせた。
『その企画、精一杯やらせて頂きます。是非とも私共に任せて下さい』
ソファーに座り直した太子党の総帥は、ヒステリックな優越感ではち切れんばかりになった笑面を向けて来た。
『そう、それで良いんだよ。善人ぶってるんじゃねえよ、時間とらせやがって。だが、良かったなあ?これで君も出世出来るよ。そう、大勢の死と不幸をハイエナみたいに食い物にしてだ!全く下賎な商売だよなあ?ああ、そうか。生まれながらにして下賎な君達にはお似合いか?ははっ♪』
悪魔と契約を結んだ報いがこの程度の侮辱で終わるのなら、A=キネは寧ろ喜んで堪えただろう。
だが、本当の報いはこれから来るのだ。
その悪魔の所業に加担してしまったと言う嫌悪なり後悔が、今後死ぬまで責苦となって己の心身を蝕み続けるだろう。
否、ひょっとしたら死んだ後すらも。
呪術的な味付けで増幅されたしがらみに霸気を奪われ、急に俯いて小さくなったディレクターの肩に、ぽんと立つ音と共に掌が置かれ、
『じゃ、頼んだよ♪』
まるで子供の約束の様な気楽な様子で、大規模テロの黒幕はその場を後にした。

残されたA=キネはそのまま座りながら背を丸め激しく頭を抱え出した。
目の前に示された栄達へのチケットは血にまみれ、その周りには、恨みに満ちた目を向けてくる未来の犠牲者達と笑いころげる堕天使と言う幻覚に彼は確かに惑わされた。
激しい逃避の願望で髪を掻きむしりながら、声にならない嗚咽が、A=キネの喉から漏れ続けた。

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